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許さない

性暴力の現場で/3 親からの虐待 義父の影におびえ続け /群馬

小6で母が再婚し悪夢が始まった

 「話し合おう」。義父はそう言って突然、部屋に入ってきた。不登校の娘を心配する「父親らしい」そぶりを見せながら体に触れてきた。その手は胸や下半身にまで伸びてくる。戸惑う娘に、義父は当たり前とでもいうかのように語りかけた。「普通の親子の間でよくあることなんだよ」。少女はその言葉を信じた。

 アオイさん(20代、仮名)は、小学6年の時に母が再婚し、義父の家があった県内に引っ越して来た。性的虐待が始まったのはそれから間もなくのことだった。

 母が寝室へ向かってしばらくすると、すっと部屋に入ってくる。義父は普段リビングで寝ていた。「誰にも言うな」と脅されることもなく、暴力を振るわれることもなかった。今から思えば、小学2年の時、実父母が離婚し、「父親」という存在がよく分からなかった。母とは仲が悪かったので相談もしなかった。言動は徐々に激しさを増した。「頭も悪いし、体を売る仕事しかないぞ。それがどういう仕事か教えてやる」。性的虐待の様子をビデオに撮られるようになった。

 「それは何?」。あれは中学2年の寒い時期だったと記憶している。保健室の養護教諭が腕の青あざに気づいた。義父からかまれたことを明かした。「頻繁にあるなら児童相談所(児相)に相談しよう」と言っていた直後、その教諭は異動になった。教諭間で引き継がれなかったのか、そのまま時間が過ぎた。

 新しく赴任してきた女性のスクールカウンセラーに全てを打ち明けたのは中学3年の秋。「家に帰すわけにはいかない」。すぐに学校が警察に通報し、児相に一時保護された。「家に戻らなくていいんだ」。ほっとする半面、「こんなに大きな問題だったのか」と驚いた。その後、児童養護施設に入所した。

   ◇   ◇

 検査で性交の痕跡が見つかった。しかし、義父が問われたのは児童福祉法違反罪。強姦(ごうかん)罪は被害者が13歳以上の場合、暴行や脅迫が伴うことが要件とされているためだ。下されたのは懲役3年の実刑判決。「そんなに短いの」。児相の職員から聞いてショックを隠せなかった。

 数年前、母から連絡があった。出所した義父が「謝りたい」と言っているとのことだった。性的虐待の発覚後、母と義父は離婚したが、関係は続いていた。拒否したが、突然、足がガタガタと震え、涙が止まらなくなった。母が自分の住所や携帯電話の番号を教えるかもしれない--。その後、市販薬を大量服薬して自殺を図ったこともある。ちらつく義父の影。忌まわしい記憶。不意に襲ってくる「薬を飲みたい」という衝動。今はただ、義父と関わらずに済むことを願っている。【山本有紀】=つづく

厳罰化へ 暴行・脅迫がなくても

 性犯罪の厳罰化へ向けた法制審議会の答申(今年9月)は、18歳未満の子どもに、父母ら「監護者」がその影響力を行使して性的暴行をした場合の罰則の新設を、柱の一つに挙げている。ポイントは、成立に暴行や脅迫は不要としている点だ。アオイさんのように性的虐待の被害者は、明確な暴行や脅迫もなく、その行為の意味も理解できない幼少の頃から日常的に繰り返し虐待を受けていることが多いため、強姦罪や準強姦罪での起訴が難しい。

 ただ、日本弁護士連合会は「自由意思による性交を処罰するのは国家による過度の干渉」だとして、「被監護者の意思に反する行為のみを処罰対象とし、そのことが文言上も明確にされるべきだ」という意見書を出している。

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