「だまされたと思って飲んでくれ。そして覚えてくれ。必ず世に出る酒だから」--。国内外の観光客でごった返す京都・錦市場。その真ん中で200年前から続く酒販店「津之喜酒舗」の店主、藤井輝男さん(50)が取引先に「神開(しんかい)」を勧める時の決めゼリフだ。
全国の地酒が並ぶ店内を見回すと、藤本酒造の「神開」は、滋賀から一足早く全国に知られた「松の司」や「七本鎗(しちほんやり)」「不老泉(ふろうせん)」と並んで目立つ位置を占めていた。「とにかく、うまい。それに、この蔵は打てば響く。全部買うからうちのために一タンク造ってくれ、と言いたくなる」。藤井さんの言葉に一層力がこもった。
藤本酒造は江戸時代中期の創業で、家督についての古文書も多く残る。当初は「宝一(たからいち)」という清酒を造っていたが、あまり上質ではなかったらしい。困り果てた当主が蔵の東にある山村神社で占ってもらうと、「井戸を掘れ」との神託が下った。その通りにすると、周辺と比べようもないほど質の良い水が湧き、うまい酒ができた。神が開いた井戸の水で醸す酒。だから「神開」。以来、藤本酒造は井戸を掘り当てた明和3(1…
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