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三反園知事 看過できない変節ぶり

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 鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事の変節ぶりに、多くの県民が疑念を抱き、不信を募らせているのではないか。

 定期検査で10月から停止中だった九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が、運転を再開した。

 知事は脱原発を掲げて7月に初当選した。ところが、今回の運転再開については、「私に稼働させるかどうかの権限はない」などとして明言を避け、事実上容認した。

 知事選で公約した原発の安全性などを検証する県独自の検討委員会の設置も、川内1号機の運転再開には間に合わなかった。知事は9月の県議会で、運転再開も含め「検討委の提言を踏まえて県の対応を総合的に判断する」と述べていた。

 なぜ、有権者との約束を破ることになったのか。その理由をきちんと説明する責務が知事にはある。

 知事は就任直後、稼働中だった川内1、2号機の即時停止を2度にわたって九電に要請した。4月に起きた熊本地震で、県民の不安が高まったことが背景にある。原発事故に備えた周辺住民の避難計画を見直す意向も示していた。

 一方、要請を受けた九電は、川内原発について、定期検査期間を中心に、法定の検査に加え熊本地震の影響を調べる特別点検も実施することを決めたが、即時停止は拒否した。

 すると、知事は「仮にどういう対応をとろうが、九電は稼働するのではないか」などと、弱腰の発言を繰り返すようになった。

 知事に原発を停止する法的な権限がないことは、最初から分かっていたことだ。だからこそ、県独自の検討委員会を早急に設置して原発の安全性や避難計画を検証し、浮かび上がった問題点を九電や政府に問うていく必要があったはずだ。

 ところが、検討委設置のための予算案を知事が県議会に提案したのは先月末で、採決は16日の予定だ。対応が遅すぎると言わざるを得ない。

 さらに疑問なのは、知事が、検討委のメンバーは議案可決まで公表できないとしていることだ。「予算成立後に委嘱する前提で依頼している」ためだというが、検討委の公正さを確保するためには、氏名を明らかにして県議会に諮るのが筋だろう。

 知事は市民団体と政策合意をした際に、検討委には「反原発の方々など幅広い人に入ってもらう」と述べていた。にもかかわらず、県議会では「約束したかどうか記憶が定かではない」と答弁した。

 脱原発は、知事選を有利に戦うための打算の産物だったのか。原発を止める権限はなくとも、原発に対する県民の不安を解消し、安全を確保する義務が知事にはある。脱原発を掲げた真意が問われている。

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