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余録

「年のはじめに夢売りは…

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 「年のはじめに夢売りは、よい初夢を売りにくる。/たからの船に山のよう、よい初夢を積んでくる。/そしてやさしい夢売りは、夢の買えないうら町の、さびしい子等(ら)のところへも、だまって夢をおいてゆく」(金子(かねこ)みすゞ「夢売り」)▲その昔は年が明けると宝船の絵を「おたから、おたから」と声をあげながら売り歩く人がいたという。元日か2日の夜にこの絵を枕の下に入れて寝ると良い初夢が見られるとの縁起かつぎである。もともと凶夢をはらう風習が良い夢を見るまじないに変わったらしい▲そのおめでたい夢を見せてくれる宝船の七福神の中には実在した人物もいる。太鼓腹(たいこばら)に大きな袋をもった布袋(ほてい)さんで、中国は唐の時代の放浪の仏僧という。その背負う袋は堪忍袋といわれ、おおらかな心や広い度量によってもたらされる「福」を象徴する存在である▲そんな寛容と和合の福神が世界中の人々の枕に宿ってほしい年を迎えた。昨年の世界を振り返れば、続くテロや内戦による難民流入で欧米社会の分裂が深まり、経済グローバリズムへの草の根の反発は米英両国で国際協調を否とする自国中心主義の噴出をもたらした▲つまりは戦後世界の成長と安定を支えた国際秩序が漂流を始めかねぬ今年である。やってくる「見慣れぬ明日」はどんな姿を見せるのか。求められるのは草の根の諸国民と開かれた世界をつなぐ新たな構想力と、相互依存の秩序を支える国際公共的な努力に違いない▲人々が互いに壁を作り始める世界には、そのすみずみにまで吉夢を届ける「やさしい夢売り」がいてほしい。日本人にそれができたらさらにすばらしい。

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