メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

秋田の売店「まつ子の部屋」 恋愛相談も

ホームで掲げる旗を手にする佐藤まつ子さん=由利本荘市の矢島駅で
ゆったりと走る由利高原鉄道。写真は曲沢駅で撮影=由利本荘市で

売店「まつ子」でリラックス

 秋田、山形両県にまたがる名峰・鳥海山(標高2236メートル)を仰ぎ見ながら走る由利高原鉄道。終着駅の矢島駅(由利本荘市)で降りて改札を抜けると、「その場所」はある。

     「まつ子の部屋」。近所に住む佐藤まつ子さん(69)が営む売店だ。あの「大物有名人」を連想させる名前だが、品のよさが漂い、着物姿でてきぱきと動き回る。間違っても「おばあちゃん」と呼べないオーラを放つ。

     初対面のあいさつ後話を聞こうとすると、「お嬢さん、笑顔が少ないよ。明るくしないとだめ」「彼氏はいるの?」などと矢継ぎ早に切り出され、終始まつ子さんペース。こうしたさっぱりした人柄に魅了され、全国からファンがやって来るという。

     まつ子さんは矢島駅に併設されていた旅行代理店に長く勤めていたが店が撤退。これを機に「矢島駅を楽しい駅にしたい」と2002年11月にオープンさせた。店頭には地元の土産品やキーホルダー、菓子パンなどが所狭しと並ぶ。桜の花を漬け込んだ名物「桜茶」を用意し、列車から降りた乗客や観光客に無料で振る舞う。「こんな遠くまで来てくれるってありがたいよ。だから少しでも心に残るおもてなしをするの。特に一人だと誰とも話さないままかもしれない。それって寂しいでしょ」と旅人を気遣う。

     生まれはマグロで有名な青森県大間町。教員だった夫を不慮の事故で亡くし、40歳前に娘2人を連れて夫の実家がある旧矢島町(現由利本荘市)に移った。子育てに仕事に必死だったが、義母が相談に乗ってくれた。「人生山あり谷あり。若いときに苦労を重ねたから今、過去の経験が生きてるなあって思う」と話す。

     人生相談や恋愛相談はお手のもの。時には「死にたい」と深刻な顔で訪ねてくる人もいる。そんなときはレジ前のイスに座ってもらって、じっくり耳を傾ける。

     売り上げが一日に数百円の時もあるが、意に介さない。客との会話が「宝物」だ。数年前からブログを開始し客との思い出を書き込んいる。店の壁にはファンから「会ってすぐに好きになりました」などの色紙の数々。中には著名な作家のものもある。最近ではついに、あの有名人にちなんで「リラックスまつ子」と名乗るようになった。

     矢島地区の仏閣や酒蔵などを巡り帰路につく瞬間に、なぜかふと寂しくなる。そんな乗客たちのために、まつ子さんはできるだけホームに立って見送る。黄色に赤色のハートマークをあしらった手作りの旗を何度も振りながら。その旗には「良い旅になりますように」と書かれている。【松本紫帆】=つづく

        ◇ 

     誰しも幼心に思ったのではないか。「いろんな鉄道に乗ってみたいなあ」と。その夢を少しでもと、東北各県のユニークな路線や駅を紹介する。では、出発進行!


     ■メモ

    矢島駅

     由利本荘市を走るローカル線由利高原鉄道(鳥海山ろく線)の終着駅で、同鉄道本社がある。同鉄道は1984年、県などの出資で第三セクターとして設立。旧国鉄矢島線を引き継ぎ、85年10月1日に羽後本荘-矢島間(全長23キロ)で開業。86年度の利用者は約63万人だったが、2015年度には約22万人。鳥海山を望む景色が好評で、作家の辻原登さんは取材に「由利鉄の車窓からの景色は日本一」と語っている。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 台風21号 列島大雨に 「特別警報」の可能性
    2. 実業団対抗女子駅伝 予選会、きょう号砲 「神宿る島」で新たな歴史を
    3. 衆院選 投票所開設、立会人寝坊で21分遅れ 大阪・高槻
    4. 母娘死亡 予備タイヤ落下か 広島の会社、現場にチェーン
    5. トランプ氏 ケネディ氏暗殺の捜査資料、機密指定解除へ

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]