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余録

「出初式都の鐘の鳴りつくし」は…

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 「出初式(でぞめしき)都の鐘の鳴りつくし」は明治生まれで後に東京市長となる永田青嵐(ながたせいらん)の句。「毎町合図の半(はん)鐘(しょう)を打ち鳴らすや、いろは四十八組、持ち場持ち場を限り繰り出す」は明治に書かれた江戸の出初めの風景だが、昔は鐘がにぎやかだったらしい▲今の東京では正月6日の行事となった消防の出初めは、明暦の大火で新設された旗本の定(じょう)火消(びけし)が上野東照宮で正月に気勢をあげたのが最初だった。西暦では1657年に起こった明暦の大火は死者10万人ともいわれる日本史上最大の火災(震災、戦災を除く)という▲当時の人は知るまいが、9年後にロンドンも歴史的大火に見舞われた。こちらはその後、木造建築の禁止など徹底した不燃都市化が進められた。かたや江戸は史家が「火災都市」と呼ぶほど大火を繰り返しては再建する営みを繰り返す。対照的な東西の大都市だった▲江戸の中村座と市村座は明暦から天保までの180年足らずの間に計31回も焼けているというから驚く。庶民も焼けるのを見込んだ安普請(やすぶしん)の長屋に住んだ。「火事と喧嘩(けんか)は江戸の華」--はなから火事に焼かれることを織り込んだ都市文明は他にあまり例があるまい▲時代変わって、震災や戦災の惨禍から耐火・防火の街づくりに取り組んできた日本人である。ただ先祖から受け継ぐ密集した街並みや伝統的家屋が火災への弱点をも引き継いだのは仕方ない。そこは最新の防火対策とご先祖譲りの「火の用心」とで対処するしかない▲糸魚川の大火をはじめ各地の火災がいつになく胸を騒がす冬となった。火災都市の名残(なごり)の出初め式に、改めてこの1年の防火・防災を胸に刻みたい。

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