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余録

年が明けて、その人の本がまた売れているという…

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 年が明けて、その人の本がまた売れているという。昨年の暮れ、89歳で亡くなったノートルダム清心学園(岡山市)の理事長、渡辺和子さんだ。ロングセラー「置かれた場所で咲きなさい」で知られる▲「どうしても咲けない時もあります。雨風が強い時、日照り続きで咲けない日、そんな時には無理に咲かなくてもいい。その代わりに、根を下へ下へと降ろして、根を張るのです。次に咲く花が、より大きく、美しいものとなるために」。そんな言葉がつづられている▲本の出発点となる出来事は9歳の冬に起きた。父は渡辺錠太郎(じょうたろう)・陸軍教育総監。大雪の朝、和子さんは兵士の怒鳴り声で目を覚ました。和室の座卓に身を隠したが、1メートルほど離れた場所で父は43発の銃弾を浴びた。陸軍将校らによるクーデター未遂「2・26事件」である▲78年たった2014年夏、毎日新聞のインタビューに和子さんは父を襲った兵士を許せるまで50年かかったと明らかにしたうえで、こう語った。「今思えば、たった一人で父を死なせることなくみとることができた私は幸せでした」。根を下へ下へ降ろした末にたどり着いた思いに違いない▲記事にはこんな話もあった。「人間の間に争いはなくならない。敵ではなく自分と戦うことなしには平和はもたらされないと思います。相手の言い分をちゃんと聞く、こちらの言い分はちゃんと言う。何が正しいかを語り合う」▲月日はたっても色あせず、ますます重みを増したように思える。地元では近く、お別れの会がある。多くの人がさまざまな機会に、自らの歩みや心境に重ね、和子さんが残した言葉を胸に刻むのだろう。

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