「人間たらしめるもの」問う中に感じる優しさ
キム・ギドクの最新作。カンヌ、ヴェネチア、ベルリン、三つの映画祭で受賞した韓国を代表する監督ですね。ただ、近作の「メビウス」を典型として、これまでの作品では残酷なシーンがたくさん出てくるので、観客の感情移入を誘うどころかそれを拒むような印象がありました。
ところがこの「The NET」は、主人公の気持ちになって見てしまう。さらに、朝鮮半島の南北分断が背景にあるのに、政治をテーマとする映画につきまとう説教臭さを感じない。感情移入するキム・ギドク映画という、ほとんど言葉の矛盾のような作品です。
ナム・チョルは、妻と幼い娘の3人で暮らす、北朝鮮の漁師。南北朝鮮の国境近くで暮らしていますが、ある…
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