SUNDAY LIBRARY

武田 砂鉄・評『渋谷のすみっこでベジ食堂』小田晶房・著

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

「計算された自然体」を「なりゆき」で越える

◆『渋谷のすみっこでベジ食堂』小田晶房・著(駒草出版/税抜き1300円)

 渋谷のすみっこ・鶯谷町に、たいした経験も持たずにベジタリアン食堂「なぎ食堂」をオープンさせた著者が、見切り発車に見切り発車を重ねて人が集う場所を作り上げる過程を描く。

 唐突にNY(ニューヨーク)へ行き、日本料理屋で天ぷらを揚げる日々を過ごしたかと思えば、帰国して音楽雑誌の編集部に潜り込み、仕事のかたわら、インディーマガジンの制作や自主レーベルを運営。青春期を引きずるかのような「なりゆき」の日々は、ライブもできる飲食店を開こう、との新たな「なりゆき」を生む。

 ヴィーガンについての意識があったわけでもなく、むしろ「ベジってそんなに選民主義的なもんなのか?」との苛立(いらだ)ちが動機。ベジ屋で頻繁に出される「車麩(くるまぶ)やトンカツ風のもの」を「ちょっと貧乏臭くないか」と牽制(けんせい)、ソイミートなどの素材を生かす方法を模索。プロではないことをむしろ特性に、業界のセオリーを軽快に壊していく。

この記事は有料記事です。

残り491文字(全文949文字)

ご登録から1カ月間は100円

※料金は税別です

あわせて読みたい

注目の特集