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社説

トランプ会見 メディア差別は許されぬ

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 驚くべき光景だった。

     米国のトランプ次期大統領が当選後初の記者会見を開いたのはいいが、挙手した米CNNの記者に対し、CNNは「偽ニュース」を流したとして質問を拒否した。

     この記者がトランプ氏に「あなたは(ツイッターでも)我々を攻撃している。質問の機会を与えるべきだ」と食い下がったのは理解できる。

     それでもトランプ氏は「わきまえなさい」「質問は受けない」などと拒み通した。民主国家の最大都市ニューヨークで、トランプ氏は独裁国家の指導者のように振る舞った。

     事の起こりは、米大統領選を標的としたサイバー攻撃に関して、トランプ氏の弱みになりうる個人・金融情報をロシアが握った可能性があるとCNNなどが報じたことだ。

     この報道をトランプ氏が否定するのはかまわないが、報道したメディアの質問を拒む権利はない。「偽ニュース」ならなおさら、質問させて堂々と答えた方が、あらぬ疑いを持たれずに済むはずだ。

     大統領選では不正確な報道があまりに多かったと語るトランプ氏は昨年11月の当選後、記者会見は開かず、主にツイッターで発言してきた。このため重大な事柄が一方的に発信され、質問もできない状況が続いた。

     20日の大統領就任式まで1週間。オバマ大統領は既にお別れ演説を済ませ、次期大統領の求心力が強まっている。権力の移行期にあたってトランプ氏は責任を自覚し、発言内容や発信の仕方に注意すべきである。

     権力者とメディアの間にはしばしば摩擦が生じる。

     共和党の故レーガン大統領は1980年代、イランへの武器売却が絡む事件への関与を問われ、大統領周辺を取材する記者たちを、血のにおいに狂奔するサメにたとえた。米議会の調査委員会は結局、大統領の責任を認め、レーガン氏はテレビでの釈明を余儀なくされた。

     2004年にはブッシュ共和党政権が、イラク戦争を批判した女性記者の質問を受けなくなった。この記者は会見場の最前列に座り、真っ先に質問するのが慣例だったが、席も後列へ下げられた。イラク戦争当時のメディアへの圧力の例として語り継がれている出来事だ。

     メディアが正確な報道に努めるのは当然だが、それは時に権力者にとって都合が悪い。だからといって権力側が特定の記者を排除し差別すれば、論調の誘導から事実上の言論統制にもつながり、民主社会の衰退を引き起こすのは自明である。

     トランプ氏はまもなく超大国の最高権力者になる。この際、権力者批判を含めた「報道の自由」の価値を、しっかり認識してほしい。

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