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東京 和のたくみ

 最新のファッションやサブカルチャー、IT(情報技術)、超高層のオフィスビル群など、東京にはさまざまな顔があるが、江戸の昔から脈々と続く「職人の町」もその一つだろう。道具をつくり、素材を整え、ゆっくりした時間のなかで日々、手を動かしている職人たち。技術革新や大量生産で安価な製品が増えたり、生活様式が変わって使われなくなったりして、昔ながらの手仕事は縮小の一途だが、後継者問題に頭を悩ませながらも、職人たちは新たな道を模索している。一方で、手仕事のぬくもりにひかれて路地裏の工房を訪ね歩く若者や海外からの観光客が増えるなど、その魅力が再発見され始めてもいる。東京の伝統工芸の職人を訪ね、匠(たくみ)の技を紹介する。

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(11)海苔づくり――漁師と職人「大森の味」伝えたい

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元海苔漁師・中村博さん「海苔で栄えた大森」を次世代に

 「朝起きると、海苔(のり)を包丁でとんとことんとこ切る。周りも大半が海苔漁師だったから、あちこちから音が聞こえたよ」。元漁師の中村博さん(81)は、懐かしそうに「とんとことんとこ」と繰り返した。

 海苔がとれるのは11月半ばから2月の厳冬期。手作業が多かったため、未明の1時、2時に起きることもあった。前日に取った海苔を刻んで真水で溶き、1枚ずつ厚みをそろえて海苔簀(す)に付ける。海苔簀は夜が明ける頃に庭先に出して、天日に干す。

 海苔が傷むため、作業場は暖房を使うことができない。軒先につららが下がるほどの寒さの中、裸電球をともし、熱い甘酒を飲みながら、多い時は一晩に2000から3000枚を付けたという。スピード勝負でもある。

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