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平松 洋子・評『幻の料亭・日本橋「百川」黒船を饗した江戸料理』小泉武夫・著

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食の伝道師が蘇らせる江戸文化の象徴たる大店

◆『幻の料亭・日本橋「百川(ももかわ)」黒船を饗(もてな)した江戸料理』小泉武夫・著(新潮社/税抜き1300円)

 古典落語に「百川」という噺(はなし)がある。のっけから魚河岸の若い衆と田舎出の奉公人との言葉が行き違い、面白おかしいズレが軽妙な展開をみせるのだが、ふんだんに盛りこまれた江戸の習俗の厚みが、この噺を名作たらしめる役目を担っている。舞台になった料理屋「百川」は、かつて日本橋浮世小路(うきよしようじ)にあった実在の大店(おおだな)であることはよく知られているが、では「百川」が出したのはどんな料理なのか、当時の江戸でいかなる役割を任じていたのか。謎のまま「百川」を想像するしかなかった。

 ところが、その正体に踏み込む一冊が現れたのだから、色めき立つのは当然のなりゆき。しかも、著者はあの小泉センセイ。興味津々で読み始めると、待ってましたとばかり幻の「百川」が息を吹き返し、ページを繰る手が止まらない。

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