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余録

江戸川柳の「寝ているは第一番の薬とり」は…

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 江戸川柳の「寝ているは第一番の薬とり」は薬を取りに来た人がたくさん待つ医者の玄関の様子という。一番乗りの人は寝て待っているというが、行列になるのは医者が繁盛を装う宣伝のために薬を出すのをわざと遅らせているからだ▲「医者の門暮れるとしめてたたかせる」。夜は早く門を閉め、急患にドンドンたたかせるのも江戸の医者の近所への宣伝策だったとか。医者の魂胆(こんたん)を知る患者はいらいらしたろう。だがそこは治療のためにはワラにもすがりたい弱みのある身、がまんしかなかった▲こちらは現代、東京都新宿区の診療所の69歳の医師が詐欺容疑で逮捕された。性病の血液検査で陰性の人に「感染している」とうその診断を告げ、治療薬の代金をだまし取った疑いである。当の医師は容疑を否認しているが、警察は被害者が多数にのぼると見ている▲「病院はもうかっている。高級外車に乗り、高級店で飲食している。不正をする理由がない」とは逮捕前の医師の小紙の取材への返答という。さて「繁盛」は本物か、それとも不正によって作り出した見せかけか。医者につけ込まれてはたまらない患者の弱みである▲薬といえば、奈良県の薬局チェーンでC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が見つかり、厚生労働省が注意を呼びかけている。その成分は調査中だが、服用する患者にはとんでもない話である。命の綱が知らぬ間にワラのひもにすり替えられたようなものだ▲「調合をしてもめったに持って出ず」も江戸の医者の繁盛偽装策だ。患者の弱みにつけ込む悪知恵の進化は何としても抑えねばならぬ今日の医療と薬である。

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