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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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巧妙な仕掛けを「からくり」というのは…

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 巧妙な仕掛けを「からくり」というのは「からくる」という動詞から生まれた。日本国語大辞典を見ると糸で仕掛けを操ることだというが、他に「工夫する」「陰にいて、工夫、計画し、人を動かす。たくらみごとをする」という語釈がある▲それによると17世紀初めにポルトガル人が作った日本語辞書にも「ずるがしこいことをしたり、思いついたりする」と説明されていたという。「内輪をからくる」という用例もあり、これは「人々の意見が同じになるよう、はかりごとをめぐらす」という意味だった▲からくりは漢字で「機関」とも書くが、こちらは日本の文教・科学行政の中枢機関の内側で動いていたからくりだ。官僚の天下りのあっせんは国家公務員法で禁じられたのに、文部科学省幹部の大学教授への再就職にあたり組織的なあっせんがあったというのである▲幹部は元高等教育局長、再就職先は早稲田大学だから、まさに官僚が関係業界や団体に再就職する天下りの典型であろう。あっせんには複数の幹部が関与し、元局長も在職中に大学側と接触していた。法をかいくぐってからくられていた高級官僚相伝(そうでん)の仕掛けである▲同様のあっせんは数十件もあったようで、事務次官は引責辞任、幹部の処分も行われる見通しという。もっとも霞が関からは他省庁ではもっと大規模な天下りあっせんが行われているとの声も聞こえる。もしや文科省のからくり仕掛けが他の役所より拙劣(せつれつ)だったのか▲天下り規制強化から10年、ここは各省庁の実態を総点検した方がいい。国民の知らない間に妙なからくりが仕込まれていたのなら、早く取り除くことだ。

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