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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 「現在バイアス」の存在を指摘したのは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した米国のダニエル・カーネマン博士だ。将来の長期的な利益と現在の短期的な利益をはかりにかけると、将来の利益を軽く、現在の利益を重く感じる心の働きをいうそうだ▲健康維持のためにはダイエットが必要だが、目の前のケーキを我慢できない。週に何日かは休肝日、と分かっていても赤ちょうちんの誘いを振り切れない。それもこれも現在バイアスで説明できるらしい▲「人間は自己の利益を最大化させようと合理的に行動する」というのが経済学の前提だが、カーネマン博士はそれを否定したわけだ。要するに人の心は弱い。であれば、「あなたの今の利益を尊重します」と現在バイアスに訴えれば、大衆の共感や支持も集めやすくなる。大衆迎合主義(ポピュリズム)である▲英国の欧州連合(EU)離脱決定、米国のトランプ現象などは、そのお手本と思えなくもない。どちらも国民の多数が選んだのだから、民主主義の成果には違いない。どうやら、民主主義とポピュリズムは紙一重らしい▲通常国会がきのう召集された。国民の代表が議論を重ね、民主主義を実践する場である。トランプ新政権をにらんだ外交や天皇陛下退位の問題、社会保障改革など課題は山積している▲まずは、5年連続で過去最大規模に膨らんだ新年度予算案が俎上(そじょう)に載る。財源の3分の1は、将来世代にツケ回しする借金である。目先の利益をばらまき、国民の現在バイアスに訴えるポピュリズムの出る幕はないはずだ。そんな企てに待ったをかける健全な民主主義を見てみたい。

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