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池内 紀・評『二代目 聞き書き 中村吉右衛門』小玉祥子・著

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大きな運命と小さな自由が無口な少年を大木に育てた

◆『二代目 聞き書き 中村吉右衛門』小玉祥子・著(朝日文庫/税抜き840円)

 歌舞伎役者はいつも厄介な立場にいる。たとえば「忠臣蔵」七段目、大星由良之助が敵討ちの計画をさとられないように、わざと酒に酔って、ふ抜け侍のふりをするくだり。酔っぱらいになってしまっては敵討ちの大義をもった人物ではなくなるし、酔わずにいたら九太夫らにさとられてしまう。微妙なギリギリのところで演じなくてはならない。

 しかも過去の綺羅(きら)星のような名優たちが名演を競ってきた。伝統芸のしばりでがんじがらめにされたなかで、自分の創意工夫を発揮するしかない。さもないと「型」の奴隷になってしまう--。

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