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社説

対馬の仏像 原状回復が国際常識だ

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 日本から盗み出された仏像ではあっても、中世に韓国から略奪されたと推定されるから韓国の寺に引き渡せという。韓国の裁判所による判断は受け入れがたい。

 仏像は長崎県対馬市の寺から5年前に盗まれ、韓国に持ち込まれた際に押収された。韓国政府が保管していたが、14世紀に所有していた韓国の寺が引き渡しを求めていた。

 判決の根拠は、仏像の内部に収蔵されていた来歴などを記した文書に日本への譲渡に関する記載がなく、14世紀半ばに倭寇(わこう)が周辺地域を荒らしていたことなどだ。

 裁判所は結論として、盗難や略奪などの形で日本へ渡ったという判断を示し、韓国の寺の所有だと「十分に推定できる」と認めた。

 しかし、韓国政府は2014年に調査して「倭寇に略奪された可能性が高いが、断定は難しい」と認定していた。今回、それを覆す具体的な証拠が示されたわけではない。

 さらに判決は、国際条約にも反する疑いがある。

 窃盗や密輸から文化財を守る国際的な取り決めが1972年に発効したユネスコ条約だ。条約に加盟した後に盗まれた文化財が他の加盟国に持ち出された場合、持ち込まれた国が返還するよう定めている。

 日韓両国は加盟国である。そして日本政府は条約に従って返還するよう韓国政府に求めてきた。

 韓国側が過去の略奪を理由に仏像の返還を求めるにしても、いったん対馬に戻すのが筋である。今回の判決では、窃盗による国外持ち出しが正当化されかねない。

 ユネスコ条約は発効前に持ち出された文化財は対象としていないが、外国に所蔵される文化財に対する返還要求は世界各地で起きている。帝国主義の時代に宗主国が植民地から大量の文化財を持ち去ったことが背景にあろう。

 外交交渉を経て、文化財が元の国に戻されたケースもある。

 日本は65年の日韓国交正常化の際に朝鮮半島由来の国有文化財の一部を、11年には朝鮮王朝の記録物である「朝鮮王室儀軌」をそれぞれ韓国に引き渡した。

 貴重な文化財であるからこそ、正当な手順を踏むことが大切だ。判決には、こうした視点が欠けているのではないか。

 日本側に根強い韓国司法への違和感を強め、日韓関係に悪影響を与えかねない点も心配だ。

 韓国社会には日本による植民地支配という歴史への反発が残っている。だが、冷静な法的判断を求められる司法までが国民感情に流されることがあってはなるまい。

 韓国政府は控訴した。上級審で冷静な判断を求めてほしい。

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