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社説

視点・トランプ時代/6 「一つの中国」 見直しは危険な綱渡り=論説委員・坂東賢治

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 トランプ米大統領は米国が対中政策の基本にしてきた「一つの中国」政策について「なぜ縛られるのか」と疑問を示す。当選後、台湾の蔡英文(さいえいぶん)総統と電話するなど慣例にとらわれず、対中政策を進める意向だ。

     しかし、見直しは、地域の緊張を高める危険性もある。1979年の米中国交正常化以来、台湾海峡や東アジアの安定を保ってきた枠組みであり、慎重な対応が必要だ。

     72年のニクソン訪中以降、米国は「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」との中国の主張に「異論を唱えない」と約束してきた。

     同時に「台湾関係法」を制定し、台湾への武器売却を続けてきた。「一つの中国」政策は中国との交流を拡大しつつ、台湾の安全を守る方策といえる。

     台湾総統との電話まで文句をつけられるのかというトランプ氏の不満はわかる。しかし、政策は極めて微妙なバランスの上に成り立っている。英BBCは「外交的な綱渡り」と評す。

     気になるのはトランプ氏が通商問題を含めた対中政策の交渉カードと考えているような発言を繰り返していることだ。

     トランプ氏に近いボルトン元国連大使は米紙への寄稿で台湾への米軍駐留の可能性にまで言及した。中国は台湾独立や外国の台湾介入には武力行使も辞さない構えだ。中国紙「環球時報」は「戦争を意味する」と反発したが、言葉だけの脅しとは言い切れない。

     「一つの中国」政策が時代の挑戦を受けていることは確かだ。90年代以降の台湾の民主化で「一つの中国」を拒む民進党が政権を争うようになった。

     トウ小平(とうしょうへい)氏は米中国交正常化後に台湾との平和的統一に向けて「1国2制度」を打ち出した。しかし、香港では十分に機能していない。海空軍を中心にした中国の軍備拡張で台湾海峡の軍事バランスも中国に傾いた。

     習近平(しゅうきんぺい)政権は民進党の蔡政権に対する圧力を強化している。「一つの中国」政策が目標とする中台問題の平和的解決は遠のいているように見える。

     米国で台湾の安全確保や地位向上には「一つの中国」政策の調整が必要だという意見が根強いのには、こうした理由がある。中国は現状を直視すべきだ。

     しかし、米国がいたずらに軍事的緊張を高めるなら台湾の利益にはならないだろう。まして中国との通商協議で台湾を利用するようなことは許されまい。

     米国が綱渡りに失敗すれば、その影響は日本など周辺地域だけでなく、世界に及ぶ。トランプ氏に熟考を求めたい。

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