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高橋一清・あの日あの人/85 中里恒子 最後の小説も「国際結婚」 /島根

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 逗子に住む作家の中里恒子さんを訪ねると、帰りがいつも遅くなった。身仕舞いを正して暮らしておられたが、ひとり住まいの家は拭いようのない寂しさだった。「もう少しいて。お話ししていたい」と言われると、老齢の女性をおいて立ち上がるのは、忍びがたい。ぎりぎりまで話し相手をつとめ、逗子駅へ急ぎ、東京行最終電車に乗り込むのだった。

 寂しい日ばかりではなかった。中里さんは節分を楽しみにして、この宵は出版各社の担当者が一堂に会した。中里さんの手料理に舌鼓を打ち、年男が声を張り上げ豆まきをした。お開きになると、それぞれに家族への土産が渡される。法被(はっぴ)を着たキューピーや貝殻細工など、自宅の戸棚には今もそれらが並んでいる。

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