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今週の本棚・本と人

『不時着する流星たち』 著者・小川洋子さん

 (KADOKAWA・1620円)

 世界の片隅で、小さな声で生きる人々の心の「穴」を描き出していると言えようか。空白が書かれている。ドーナツの真ん中のごとく。「気の短い人が読めばイライラするかもしれませんね。でも、空白にも匂いや触覚が歴然としてあります」。10編から成る短編小説集である。

 「カタツムリの結婚式」は、8歳か9歳くらいの「私」が「同志」を見いだす物語。国際空港の出発ロビーの目立たない一角で、「その人」はいつもガラス板に6匹のカタツムリを乗せてレースをさせている。見物客がおり、「私」は熱心に通う。

 荒唐無稽(むけい)に思えるが、カタツムリを偏愛した作家がかつて実在し、持ち込みが禁じられたフランスには乳房の下に隠して持ち込んだという。「つまり、現実は作家の想像力を上回るということ。私はあくまでも現実に錨(いかり)でつながれています」。ファンタジーなのにリアルなゆえんだ。どの話を読んでも、設定それ自体への驚きはすぐに後方へ飛び去り、虚実が一続きの小川ワールドを旅できるだろう。

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