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著者インタビュー 高見のっぽ 『ノッポさんの「小さい人」となかよく……』

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尊敬のいちばん上は“大好き” 先生なんて呼びたくない

◆『ノッポさんの「小さい人」となかよくできるかな?ノッポ流 人生の極意』高見のっぽ・著(小学館/税抜き1400円)

 長きにわたって、しゃべらない人気者「ノッポさん」を演じた高見さん。ある年代以上の人なら、誰でも知っているだろう。

「手順を教えるんじゃなくて、工作の楽しさを伝えるのが眼目。それには言葉で『こう折って貼って』って教えるより、しゃべらずに音楽に乗って体を動かしたほうが伝わるだろうって。私の体形や動きを面白がって、うまく使ってくれる人がいて、ノッポさんが生まれたんです」

 セリフがないので、観ている子供は一生懸命にノッポさんの顔と動きを追う。自然に画面に引き込まれていった。その豊かな表情と大きなジェスチャーは、今も変わらない。たとえば本書でも紹介されている、タップダンスの先生とのエピソード。

「本当に偉い人で、普通なら先生って呼ばなかったらカーン!って来るような人なんですよ」

 怒る先生の様子を、目をむいて拳を握って伝える。

「でも私だけは“じいちゃん”って呼んでた。初めこそ〇×$!?って顔してたけど、そのうち普通になっちゃった(笑)」

 記号の部分は、文章では伝えられない。しかし、びっくりして、ちょっと弱った先生の戸惑いが、実によくわかる。

「その先生はすごく尊敬してましたよ。でも尊敬のいちばん上は“大好き”なんです。大好きな人は先生なんて呼びたくない。だから“じいちゃん”。先生も、『コイツはオレのことが好きなんだな』ってわかってくれたんだと思います」

 子供という言葉は、大人の“上から目線”だから使わない。だから「小さい人」と呼ぶ。そして礼を尽くして相対する。

「だけど仲良くなったら、やる時はやりますよ。3歳くらいの子が甘ったれて泣くでしょ? でも魂胆がわかるから、『そんな泣き声に騙(だま)される、そこらのおじいちゃんとは訳が違うんだぞ』という気持ちで『おい!』ってやる。そうすると、だんだん泣き声が小さくなって、しまいに泣きやんでニタッと笑う。親は驚くけど、向こうは『読まれてる』ってわかるくらい賢いんですよ」

 この「おい!」が、また味わい深い。決して威嚇ではない。むしろ共謀者のような悪戯(いたずら)っぽい目つき。子供、いや「小さい人」はイチコロだろう。しゃべるようになって長いノッポさんだが、表情のパワーは相変わらずだ。

「こんなにつき合いの長いノッポさんですが、私自身は彼にずっと災難を被っております。これ(トレードマークの帽子)は被(かぶ)らなきゃいけない(笑)」

 本書でも、40歳の頃に、ノッポさんの人気ゆえに、芸人としての前途に悩んだことが語られている。

「でもね、2年悩んで吹っ切れて『仕事は一生懸命にやる、さすれば失敗してもよろしい』って思えるようになった。だから人生、何をやるにも遅すぎることなんてありませんよ。でも、あの番組の人より、もっとスゴイ人が私を見つけて育ててくれたら、ずいぶん違った人生だったかもねぇ(笑)」

 そう言いながら、ずり落ちるほどソファに沈み込み、長い脚を大きく組み替える。やっぱりノッポさんだ。

(構成・小出和明)

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高見のっぽ(たかみ・のっぽ)

 1934年、京都府生まれ。67年から20年以上にわたり、NHK教育テレビ(現・Eテレ)「なにしてあそぼう」「できるかな」に出演。しゃべらずに鮮やかな工作を披露する「ノッポさん」として親しまれる。以後俳優・歌手、作家(高見映名義)など幅広く活動している

<サンデー毎日 2017年2月19日号より>

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