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私の出発点

加賀乙彦さん『宣告』 人間の条件、深く問い

加賀乙彦氏=東京都文京区で

「あす、きみとお別れしなければならなくなりました」

「はい」他家雄は無表情のまま、凝(じ)っと所長を見詰めた。

「いいですか」所長は焦り気味に、言葉全体に真実らしさを与えるべく、重々しく言った。「これは冗談ではないのです」

「わかっております」(『宣告』新潮文庫より)

 「人間の条件」とは何か。重いテーマに挑む大作だ。死刑制度のあり方や拘禁状態の精神医学、家族や信仰の問題、さらに戦中戦後の世相が克明に描かれる。すべての事象にピントが合っている。「人間を深く描きたい。だから僕はずっと長編を書いていく。そう決意するきっかけになったのが『宣告』です」

 時は1960年代後半の2月。39歳の楠本他家雄(たけお)は拘置所にいる。最難関のT大法学部を卒業しながら24歳で殺人を犯し、逮捕されてから獄中生活は15年に及ぶ。6年前に死刑が確定した。いつ「お迎え」が来るか分からない日々の中、他家雄は読書や獄中記の執筆にいそしんできた。20代の精神科医、近木は穏やかな他家雄の内面に興味を抱き、独房を訪ねて診察する。

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