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中村桂子・評 『ゴジラ幻論 -日本産怪獣類の一般と個別の博物誌』=倉谷滋・著

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 (工作舎・2160円)

生物学の興味溢れるゴジラの世界

 一九五八年生まれの著者が初めて観(み)た映画が「モスラ対ゴジラ」であり、劇場で怪獣を見る貴重な体験として残っているという。ビキニ環礁の核実験によって生まれた「ゴジラ」が登場したのが一九五四年、ゴジラと共に育ったのだ。この時高校生だった評者は子ども向けと受け止め、映画館に足を向けなかった(観る映画がたくさんあった)。世代の違いを感じる。ところで、お母様がすばらしい。怪獣ブーム真(ま)っ只中(ただなか)の息子に古生物図鑑を買い与えたという。著者の専門は進化発生学だが、物質の機能だけから生命現象を語ることが多い中で形態学の歴史を踏まえた比較形態学を進めている。妄想と科学が微妙に重なり合う「亜博物学」、ゴジラ幻論は著者にしか語れない。

 三章から成る。第一章「ゴジラ生物学会特別紀要」より--巨大不明生物の起源。第二章「個別の博物誌--ゴジラ生態圏をめぐる四つの報告書」。第三章「怪獣多様化の時代をめぐる随想--一九六〇年代の『ワンダフル・ライフ』」。一章と二章は、動物形態学・解剖学・発生生物学・古生物学の最新成果を踏まえた科学的考察である。ゴジラでなくとも、由来が未解明で議論中の生物は少なくない。そこにゴジラを入れるとどうなるか。…

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