「だいじょうぶ」キャンペーン

避難生活、少しでも改善 プライバシー確保し人権守る

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インタビューに応じる建築家の坂茂氏 拡大
インタビューに応じる建築家の坂茂氏

 間もなく東日本大震災の発生から6年を迎える。「『だいじょうぶ』キャンペーン」(主催・同キャンペーン実行委員会)はこれまで、犯罪や災害、交通事故から子どもたちや高齢者、地域を守る街づくりを目指す活動を全国各地で行ってきた。防災について意識が高まるこの時期、災害に関わる問題に取り組む人たちに防災の課題や日常の心構えなどについて聞いた。

世界の地震被災地に仮設住宅提供 建築家、NPO代表・坂茂さんに聞く

 大災害時に被災者が一時的に身を寄せる避難所のプライバシー保護や仮設住宅の整備などの課題に、2014年に建築界のノーベル賞と称される「プリツカー賞」を受賞した世界的建築家、坂茂さん(59)が取り組んでいる。紙管を使った避難所間仕切りシステムを考案し、昨年4月の熊本地震でも避難所に設置された。また、東日本大震災で被災した宮城県女川町のJR女川駅の新駅舎を設計。坂さんに被災地支援の課題などについて聞いた。【遠山和彦】

 --避難所や仮設住宅に携わられています。

 ◆建築家はどのようにして社会の役に立てるだろうという思いが以前からありましたが、1994年秋にルワンダ難民が毛布にくるまって震えているカラー写真を週刊誌で見て、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に紙管のシェルターを提案しました。95年の阪神大震災の時に、鷹取教会(神戸市長田区)に集まるベトナムからの難民の被災者たちが政府の仮設住宅に移れず公園でテント生活をしていました。そこで彼らのために「紙のログハウス」と呼ぶ仮設住宅をつくりました。そしてそのころ、避難所の様子を見て、みなさんプライバシーがなく、たいへんな状況を知りました。災害で精神的にも肉体的にもたいへんな思いをしている人がまた、劣悪な避難所や仮設住宅に入らざるを得ない。避難所の支援はこの時はできませんでしたが、避難所の住環境を改善することは建築家の重要なテーマです。しかし、建築家が携わるものだという意識がこれまではありませんでした。私はボランティア組織であるNPO「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク」の代表もしており、日本だけでなく、99年トルコ大地震、01年インド西部大地震の際にも仮設住宅をつくり、世界中で活動しています。

 --避難所の間仕切りを考案されました。

 ◆避難所にプライバシーがないため、来たがらない人もいます。みなさん避難所で段ボールで仕切りを作るなどされていましたが、あれではプライバシーは守れない。プライバシー保護は人権として当然のものです。04年の新潟県中越地震で初めて紙のハニカムボードで避難所の間仕切りを作りました。当初は避難者の状況、要望も知りませんでした。2人で避難している方もいれば、6人家族の方もいて人数もまちまちです。また間仕切りを管理する方のニーズもくんだものにしないといけない難しさがありました。05年の福岡沖玄界地震の経験も踏まえ、06年には紙管のフレームを組み立て、壁は布をカーテン状に使う改良を行い、11年の東日本大震災ではフレームのジョイント部分をさらに改良したものを設置しました。

女川駅舎の再建 温泉と一体設計

 --15年再建のJR女川駅を設計されました。

坂茂さん設計のJR石巻線女川駅=宮城県女川町で2015年、竹内紀臣撮影 拡大
坂茂さん設計のJR石巻線女川駅=宮城県女川町で2015年、竹内紀臣撮影

 ◆女川町には十分な平地がなく、仮設住宅が不足していると聞きました。プレハブの仮設住宅だと隣の音が聞こえて、居心地が悪いし、あるいは自分のところの子どもが騒いで隣に迷惑をかけるのではないかというストレスも負担になります。そこで海上輸送用コンテナを使った3階建て仮設住宅を提案しました。この仮設住宅が成功して、次は「ゆっくり入れる銭湯を」という要望に応えるため動いていましたが、駅近くに温泉の施設があり、駅と合体して設計してくれと要請され、設計しました。海が見える場所にある終着駅という珍しいもので、海鳥が羽を広げる姿をイメージしています。駅を中心に新しい商店街をつくる構想がもともとあり、シンボリックなものになったと思いますね。

 --災害が起きる前にできることは?

 ◆災害のない平常時は自治体の防災の日のイベントなどで間仕切りなどのデモンストレーションをさせてもらっています。「こんないいものがあるよ」というのを見ていただいて、住民の人とコミュニケーションをとっています。防災に意識を持つことは重要ですね。また、間仕切りは高さが約2メートルあるので子ども向けバージョンを作って、子どもたちに作ってもらったこともあります。やはり、災害時はパニックになっているし、行政はどこでも前例のないことは受け入れないです。私たちのNPOはこれまで京都市、神奈川県秦野市、大分県、東京都世田谷区、福岡県と防災協定を結びました。災害があったら連絡をくれて、避難所に間仕切りを設置するためのものです。熊本地震の2日後には防災協定を結んだ大分県の知事と連絡をとって、大分経由で熊本に間仕切りをつくることができました。2カ月間で2000ユニットくらい、速いスピードでできました。災害はいつ起きるか分からないので、早い時期に全国で防災協定を結ぼうと考えています。


 ◆3・11を前に 日常の備えは…

防災、年2回は家族で話し合って 危機管理アドバイザー・和田隆昌さん

 災害に備えて、普段から心がけておくことは、どのようなことなのだろうか。危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに備えるべきポイントについて聞いた。【遠山和彦】

    ◇

 まずは、大地震などが起きた際の1次被害に遭わないために寝室の安全を確保することが重要なポイントです。寝ている場所に家具などが落ちてこないようにしたい。次は避難経路を確保しておく。ガラスが割れて床に散らばって寝室から出ることがままならなくなる危険もあります。廊下や玄関につぼや水槽などの割れ物を置くことも通路をふさぐ危険があります。

 次に住んでいる場所の生活環境によって、災害のリスクは異なります。自分の住んでいるところが、河川の近くにあるかどうか、土砂災害の危険のある場所にあるかどうかなど、引っ越しをした場合などは自宅周囲の生活環境の災害のリスクを確認しておくことが必要です。

 備蓄・避難用品については、背負って走れる非常持ち出し袋(重量5キロ以下)に1次持ち出し品をまとめて、玄関付近の目につくような場所に置いておきます。居間などに置いておくと、いつの間にか押し入れの奥にしまい込んでしまう可能性があるので、避けた方がいいです。非常持ち出し袋に入れるものは最小限に絞った方がいいです。食料などを大量に避難所に持ち込んでも、現実的には独り占めで食べるわけにいかず、人に分けてあげることになります。また、貴重品は非常袋に入れたり出したりするのが大変ですから、袋には入れずに別にして身近なところに置くべきです。

 非常持ち出し袋と別に飲料水や非常食など、避難所に行かなくてもすむための長期避難用品を倉庫やロッカーに備蓄しておきます。とにかくまとめておくことが大切です。長期備蓄しておくべき飲料水・生活用水の量は一戸建ての場合とマンションなどの集合住宅の場合では異なります。身動きがとれなくなる危険のあるマンションの上層階などであれば、1週間分程度備蓄しておくことをお勧めします。避難所は行かざるを得ない人のためのものです。飲料水、トイレが自宅でまかなえるのなら、避難所で体調を崩す危険も回避できます。

 災害はいつか必ず起きるものですから、備蓄品などは習慣として備えておくべきです。しかし、一年中では緊張も続きません。防災の日の9月1日、東日本大震災の起きた3月11日の年2回くらいは家族で防災について話し合ったり、備蓄物の入れ替えをしたりするのはどうでしょうか。


1次持ち出し品リスト

 ■飲料水(500ミリリットルペットボトル2本)

 ■非常食(菓子類、ゼリー状の食品)

 ■医薬品(消毒薬、三角巾、マスク、胃薬、解熱薬など)1週間分

 ■衣類(防寒具)

 ■アイマスク、耳栓(災害時の避難所で体を休めるために必須)

 ■懐中電灯(手巻き式が良い)、電池

 ■携帯ラジオ(手巻き式、携帯充電器との一体型が良い)

 ■携帯電話、スマートフォン、充電器、予備バッテリー

 ■現金(10円玉も) 数千~2万円くらいを個人で判断(1000円札、硬貨含む)

 ■雨具(雨ガッパ)

 ■タオル(大小)

 ■洗面道具(旅行用で可)

 ■ウエットティッシュ(携帯用のものを数パック)

 ■ビニール袋(大小3~4枚。半透明・黒色、保存用袋数枚)

 ■風呂敷

 ■筆記具(油性フェルトペン、ボールペン)

 ■お薬手帳(投薬履歴を書いたもの、病院管轄の薬局で配布される)

 ■貴重品(財布、印鑑、通帳など枕元に別途まとめて避難時に持ち出す)

 ※重量5キロ以下(背負って走れる程度)に抑える。

 ※上記を玄関付近の目につく場所に設置する。居間や寝室では、いつの間にか押し入れの奥にしまいこむ危険がある。


 ◆安心安全な街つくろう

 犯罪や事故、災害などの「こわいもの」から子どもやお年寄りを守り、自然に「だいじょうぶ」と声を掛け合える社会を目指す運動。ロゴマークは、「行政」「企業・団体」「市民」の三つの輪をかたどり、安心安全の輪を大きくしていきたいという願いをこめている。


 ■主催

「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会

(会長=国松孝次・元警察庁長官、認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク会長)

 ■共催

全国防犯協会連合会、全日本交通安全協会、日本消防協会

全国防災協会、日本河川協会、日本道路協会、都市計画協会

全国警備業協会、日刊建設工業新聞社、ラジオ福島、毎日新聞社

 ■後援

内閣府、警察庁、文部科学省

国土交通省、消防庁、海上保安庁

東京都、NHK

 ■協賛

JR東日本、セコム、千葉科学大学、東京海上日動

トヨタ自動車、みずほフィナンシャルグループ

三井不動産、明治安田生命

 ■協力

地域安全マップ協会

プラス・アーツ

情報セキュリティ研究所


 ■人物略歴

ばん・しげる

 1957年、東京都生まれ。南カリフォルニア建築大を経て、クーパー・ユニオン建築学部卒。この間、磯崎新アトリエにも勤務。85年、坂茂建築設計を設立。95年から99年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタント。2015年から慶応義塾大学環境情報学部特別招聘(しょうへい)教授。


 ■人物略歴

わだ・たかまさ

 1965年、神奈川県生まれ。明治学院大学法学部卒。生活情報サイト「オールアバウト」の防災ガイド、アウトドア雑誌の編集者を歴任。防災士の資格を取得し災害危機管理アドバイザーとしての活動を開始。NPO法人防災・防犯ネットワーク理事。

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