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障害者施設

元職員の女性「虐待告発したら報復でうつ病」

570万円の支払い求める訴訟を提訴へ

 虐待を告発したことで障害者施設から損害賠償請求されるなどして精神的苦痛を受けたとして、告発した元職員の女性(44)が28日、施設側に慰謝料や治療費など約570万円の支払いを求める訴訟をさいたま地裁に起こす。女性は告発後に退職し、うつ病を発症しており、「施設側の賠償請求は不当な報復だ」と訴える。

 虐待があったのはさいたま市の障害者就労支援施設「キャップの貯金箱」(昨年12月閉鎖)。職員だった女性の通報を受け、市は2015年5月から監査に入り、男の職員が知的障害の男性利用者2人の裸の写真を撮影し、一部を無料通信アプリ「LINE(ライン)」で同僚に送るなどの虐待をしていたと認定し、翌月に改善を勧告した。

 訴状によると、女性はこの件などを15年3月に市に通報。その後、テレビの取材に同様の証言をした。

 施設を運営するNPO法人「キャップの貯金箱推進ネットワーク」は、市の改善勧告直後、ホームページに利用者の母親が書いた文章だとして「(女性の)言動に社会人として逸脱しているような事があり理解できなかった」「告発という形で外部に発信すること自体が本当の虐待」などという趣旨のメッセージを掲載。さらに10月には「テレビの取材に虚偽の説明をした」などとして約670万円の賠償を女性に求めた。

 女性は通報の翌月に退職。これらの影響でうつ病になり、現在も通院を続けているという。裁判では施設側への賠償の支払い義務がないことの確認なども求める。

 女性は「通報したことで仕事も辞めざるを得なくなった。施設側の報復を放置すれば虐待の通報ができなくなり、声を上げられない障害者にしわ寄せが来る」と訴える。

 当時施設長を務めていたNPO法人の戸塚幹男代表理事は「訴えの内容を確認していないのでコメントできない」としている。【黒田阿紗子】

通報者保護に反する罰則規定なく

 福祉施設や事業所での障害者への虐待は増加傾向にある。2015年度に職員らによる虐待を受けた被害者は569人で、12年度の調査開始以来、過去最多を更新した。

 知的障害者などは被害を訴えにくいケースもあり、明るみに出すには周囲が声を上げることが大切だ。12年施行の障害者虐待防止法は、虐待に気付いた人に自治体への通報義務を課し、施設職員らは通報を理由に不利益な取り扱いを受けないとも明記している。

 しかし、通報者保護に反する罰則規定がないことが、施設側の強硬姿勢を生んでいると指摘されている。通報した職員が施設側から損害賠償を求められる今回と同様のケースは他にもあり、鹿児島地裁では元職員と施設側の双方が提訴している。障害福祉の専門家らによれば、訴訟にはなっていないものの職員が自主退職に追い込まれることは珍しくないという。

 女性の代理人で、鹿児島の訴訟の元職員側弁護団にも加わる大石剛一郎弁護士は「施設側から損害賠償を求められるような状況を見過ごせば、法律の理念は骨抜きになる」と懸念する。【黒田阿紗子】

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