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(新潮社・各1944円)
「肖像画文学」に独自の位置
自己の闇と悪に対峙(たいじ)し、その深みへと降りていく通い路(パッセージ)を探す物語である。一方、親になることを巡る話でもある。『羊をめぐる冒険』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』などの代表作との濃厚な共通項があり、もはやセルフパロディや過去作のリユースという範疇(はんちゅう)を超え、全仕事を総括した二十一世紀版「春樹ワールドの語り直し」とも感じられる。
村上作品において魂の深淵(しんえん)、あるいは異世界への通路は様々な形で「発見」されてきたが、本作でそのとば口となるのは、一枚の絵画だ。そこから、主人公は「穴」へと導かれる。
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