メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

今週の本棚

村上陽一郎・評 『人はどうして老いるのか-遺伝子のたくらみ』=日高敏隆・著

 (朝日文庫・670円)

「無」でなく、確固として生きている

 文庫本ではあるが、日本人男性の平均余命に達した人間が、こうしたタイトルの書物を開くのは、確かに僅かながら勇気が要る。本書は、老いる、と加齢の区別に始まって、まずは動物は「老いない」あるいは「老いた」動物はいない、というテーゼを出発点にする。「え?」と訝(いぶか)しく思う方もおられようが、日高さんは「老いる」は「死」を前提にした概念である、と定義するから、自然にそうなる。通常動物は「老いた」ら、即「死ぬ」のである。だから、自然界で「老いた」動物に出会うことは普通ないのである。そのことを前提にした次の言葉に凝然としない読者は、至って若いか、想像力が欠如しているからだろう。「十分に老いているのに死なない人もたくさんいる。それをわれわれは高齢化社会と呼んでいる」

 「老いた」動物は自然界には存在しないと書いた。そんなはずはない、我が家のイヌは、ネコは、と直ちに反論があろう。日高さんもペットは別だという。野生動物が日夜生命を賭してそのために闘う食料と安全な生活は、初めから「与えられた状態」にあるのがペットである。ペットは使役のため、あるいは肉や卵を得るために飼われる家畜とも違って、その存在自体が人間にとって価値があると見なされる。

この記事は有料記事です。

残り880文字(全文1427文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 全国で2529人感染確認 東京・愛知で最多 死者新たに31人、計2109人

  2. GoTo停止 官邸「東京まだ逼迫してない」 札幌・大阪発自粛要請

  3. 全国で新たに1945人の感染を確認 死者は21人増え、計2049人に

  4. 嘉穂劇場の運営団体解散へ コロナで経営難、30日決議 福岡・飯塚

  5. 大阪府の感染状況は「緊急事態宣言級」 専門家が憂う最悪の事態とは

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです