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北朝鮮の核・弾道ミサイル開発の進展を受け、攻撃される前に敵のミサイル基地などをたたく敵基地攻撃能力の議論が進んでいる。
安倍晋三首相は検討に前向きな考えを示し、自民党の弾道ミサイル防衛に関する検討チームも議論を始めた。2019年度からの次期中期防衛力整備計画をにらんだ動きだ。
敵基地攻撃能力を持つことが、憲法に反しないかどうかについて、政府は法理論的には可能としてきた。
1956年に鳩山一郎内閣は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」として、攻撃を防御するのに「他に手段がない」場合に限り、ミサイル基地をたたくことは「法理的には自衛の範囲」との見解を示している。
さらに政府は、先制攻撃とは区別し、第一撃を受けたり、ミサイルに燃料を注入するなど敵が攻撃に着手したりした時点で、敵基地攻撃が可能になるとの見解も示している。
しかし、こうした政府の見解はあくまで法理を説明したものだ。現実の状況をあてはめた時、数多くの問題点が浮上する。
ポイントの一つは「他に手段がない」場合をどう考えるかだ。
日米安全保障条約によって、米国は日本防衛の義務を負っている。
米軍が「矛」としての打撃力を持ち、日本は憲法や専守防衛のもと「盾」である防御力に徹するという役割分担になっている。
いざという時、在日米軍による報復攻撃という手段がありながら、自衛隊が敵基地攻撃をすることは、日米の役割分担の枠組みを超える。
さらに大きいのが装備の問題だ。日本は専守防衛のもと攻撃的防衛力を持たないことを原則にしてきた。
敵基地攻撃で考えられる装備には、精密誘導爆弾を搭載した戦闘機や、弾道ミサイル、巡航ミサイルなどがあるが、自衛隊はこうした装備を持っていない。
敵基地攻撃をするためには、まず敵基地の場所を正確に把握し、次に敵の防空用レーダーの機能をつぶし、そのうえで敵基地をたたくわけで、それぞれに装備が必要だ。
専守防衛の武器の体系を抜本的に変える必要が出てくるだろう。
防衛費は大幅に増え、逆に安全保障環境を悪化させかねない。
そもそも、移動式発射台や潜水艦から撃たれるミサイルの発射場所をどう把握し、正確にたたくことができるのか。実効性や費用対効果への疑問も尽きない。
課題はあまりに多いのに、軍事的な対抗策に議論が偏り過ぎていないだろうか。そんな状況で首相が前のめりに検討する姿勢を示していることに懸念を覚える。
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