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詩歌の森へ

文芸ジャーナリスト・酒井佐忠さんの「詩」に関するコラム。

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終わらない3・11=酒井佐忠

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 先週は福島県いわき市の詩人斎藤貢の詩を紹介したが、今回は福島市のベテラン歌人波汐國芳の歌集『警鐘』(角川文化振興財団)だ。テーマを要約する帯文は、「3・11はまだ終わっていない。被曝地の福島に暮し、その運命を問い続ける作者。破滅への歯止めのために、歌人にできることは何か。情況をひたむきに詩的現実として昇華した317首」とある。まさにその通り。第32回詩歌文学館賞(短歌部門)に決まったばかりの重い一冊だ。

 <被曝五年靄立ちこむる福島の沖ゆく船の警笛ひびく>。船の警笛は「以後の時代」を生きる私たちの社会のあり方を鋭く問う。<ああ我ら何にも悪きことせぬを「原発石棺」終身刑とぞ>。チェルノブイリ原発の廃炉がコンクリートで覆われたことから「原発石棺」の形容が生まれた。<セシウムに追われ追われて古里の塩屋岬の突端に佇(た)つ>。美空ひばりの歌碑でも知られる塩屋の岬。悲劇も生んだその突端に唯一の救いを求める作…

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