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混迷を深める世界情勢のなかで、とるべき針路は――。日本を代表する国際政治学者が交代で論じます。

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米国第一主義下のアジア 日本、2国・多国の枠組みで=政策研究大学院大学長・白石隆

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上下両院合同会議で演説するトランプ米大統領。物言いはおとなしかったが、「米国第一主義」は変わらなかった=ワシントンで2月28日、AP
上下両院合同会議で演説するトランプ米大統領。物言いはおとなしかったが、「米国第一主義」は変わらなかった=ワシントンで2月28日、AP

 トランプ米政権が発足して7週間になる。年末年始、米国の友人から「安全ベルトをしっかり締めろ」という趣旨のメールをずいぶんもらった。乱の到来を予感してのことであるが、それにしても予想以上の混乱である。これは対外政策についても言える。

通商自由化、逆戻りの懸念

 2月28日の就任後初の議会演説=1=でもそうだったが、トランプ大統領は「米国第一」を唱える。国益追求はあたりまえではないかという人もいる。しかし、これは誤りである。米国の利益は米国主導の世界秩序に埋め込まれている。それがどういうことかを見るには米国優位の安全保障秩序がいかに維持されているかを考えればよい。米国優位の基礎にはその圧倒的軍事力がある。しかし、同時に、この優位は、大西洋では北大西洋条約機構(NATO)、アジア太平洋では日米同盟、米豪同盟等、米国中心のハブとスポークの同盟体制に支えられている。その意義を理解せず、同盟国は米国にただ乗りしている、そんな同盟は要らないと、国益を狭く定義し、米国中心の秩序を壊しかねないのが「米国第一」である。

 幸い、マティス国防長官ほかの献策のおかげだろう、大統領は同盟体制を見直さないことにしたようである。その一方、新政権の「米国第一」は冷戦終息以来の米国の大戦略であるグローバル化戦略に大きな変更をもたらしている。グローバル化戦略はグローバル化とは違う。金融、通信等のグローバル化は技術進歩と市場の力で進んでいく。これを踏まえ、グローバル化は米国の利益になると判断して政策的に推進するのがグローバル化戦略…

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