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生け花 会社帰りに、男性や経営者も 裾野広がる 門弟減少、池坊など多彩なレッスン

「池坊ビギナーズレッスン」に参加し、真剣な表情で花を生ける参加者たち=京都市中京区の池坊会館で、小松雄介撮影

「察する文化」次世代に

 生け花を楽しむ人の層が広がっている。伝統的なお稽古(けいこ)事として「女性のたしなみ」「堅苦しい」といったイメージを持たれがちだが、サラリーマンや学生らが気軽に通える教室が人気を集め、企業経営者らによる花展も開かれている。その魅力を探った。【花澤茂人、写真・小松雄介】

     柔らかな曲線を描くクロメヤナギの枝を真剣な表情で剣山に挿し、微妙に角度を整える男性。花ばさみを手にナデシコの茎の長さを調節する女性。作品が完成すると講師のアドバイスを仰ぐ。3月初旬、「生け花発祥の地」とされる頂法寺(六角堂)に隣接する池坊会館(京都市中京区)で開かれた「池坊ビギナーズレッスン」。約15人の参加者が思い思いに花と向き合い、穏やかな緊張感が漂っていた。

     華道家元池坊(同区)がこのレッスンを始めたのは2015年。単位制で、金曜の午後5~9時、土曜の午後2~5時に開講し、好きな時間に受講できる。ステップを重ねると免許状も受けられる。入会金は不要で、受講料は入門編(8レッスン)で3万400円(花材費込み)。東京、京都の2会場でこれまでに延べ約300人が受講した。

     開講の背景には先細りへの危機感がある。池坊によると、門弟の数は1993年ごろからの数年間をピークに現在はおよそ半減しているとみられ、「興味はあるが踏み込めない」という人をいかに取り込むかが課題だ。事務局の保福範子さん(47)はビギナーズレッスンについて「仕事が忙しく月謝が無駄になる、何年続ければいいのか分からない、人間関係が不安など、先生の自宅で習うスタイルにためらう人の受け皿になっている」と話す。

     参加者は20~30代の若者が中心で男性も3割ほどいる。15年12月から通っているというウェブデザイナーの大森啓史さん(36)=京都府長岡京市=は「家族が生け花をやっており興味はあった。通いやすさに引かれた」と振り返る。生け花の魅力について「日常的に花に目が向くようになった。仕事でもレイアウトなどの考え方に影響しているかも」と笑顔を見せる。

     ビジネスの最前線にいる経営者らの間でも生け花への関心が高まっている。15年から東京都内で開かれている「フラワージャパン ビジネスリーダーたちのいけばな展」は大企業の社長や大学教授らの作品を並べる花展で、昨年は約50人が参加。「生け花は武家社会や貴族社会で親しまれてきた。女性だけでなく男性や経営者たちが魅力を感じるのは自然」。実行委代表を務める草月流本部講師でいけばな作家の州村衛香(すむらえいこう)さん(73)は話す。

     生け花人口減少に危機感を抱く州村さんが知人の経営者に相談し、仲間に輪が広がった。ほとんどが未経験者だったが「こんなに楽しいと思わなかった」とのめり込む人が多いという。

     ビジネスと生け花の共通点は何か。「まず物事を立体的に見る目。さらに決断力、直感力、瞬発力」。花材のどの部分をどう生かすか、どの部分を切り取るのか。生け花は素早い決断の連続という。「経営者たちは仕事で培った力を生かせるし、逆に生け花から学ぶこともあるはず」と力を込める。

     物言わぬ花と向き合うことは、察する心、他者への気遣いなども養う。「影響力のある彼らにメッセンジャーとなってもらい、大切な文化を次世代につないでいきたい」と州村さんは裾野の広がりに期待している。

    初心者記者も挑戦

     生け花未経験の記者も池坊のビギナーズレッスンにチャレンジした。

    「池坊ビギナーズレッスン」に参加した花澤茂人者の作品。左は塩野敬子講師の講評を受ける前、右は受けた後=京都市中京区の池坊会館で、小松雄介撮影

     「空間を花で埋めるのではなく、花で空間を作るのです」。講師を務める華道教授の塩野敬子さん(54)がまず心得を教えてくれた。レッスンでは花材を外形的特徴で「線」「面」「点」「マッス(まとまり)」に分け、「縦」「横」「斜め」の方向と組み合わせる。最初は「線」の花材を「縦」に。与えられた主材はスッと伸びたオクラレルカの葉。塩野さんは「まず主材で『家』を作り、その中に花を配置します。『野にあるように』を意識して」。

     主な花はカーネーション。花ばさみで茎を切り高さに変化をつける。やり直しできない緊張感がある。一つの花だけに集中すると全体のバランスが崩れてしまい、何度かやり直した。

     約30分で生けた作品=写真<1>=を塩野さんに見せると「これでは二次元的。絵のようです」とのだめ出し。「もっと前後にも空間を取って」とオクラレルカを幅広く配置して、その間に多くの花を挿すと、動きのある作品に変化した=同<2>。

     花に触れ、完成した作品を眺めていると不思議な安らぎがある。参加していた大森さんが話していた「花の命をいただいていることを忘れないようにしたい」という言葉をかみしめながら、また挑戦したいと感じた。


    こんなメリット

    日常 花に自然と目

    ビジネス 決断力培える

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