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<記者の目>東日本大震災6年 福島原発の廃炉=関谷俊介(東京社会部)

福島第1原発に林立する汚染水の貯蔵タンク=2016年2月、本社ヘリから喜屋武真之介撮影

作業担う外国人、把握を

 東京電力福島第1原発の廃炉作業に、外国人労働者が従事している。汚染水対策が切迫する中、日本人溶接工が被ばくを恐れて敬遠した汚染水貯蔵タンク建設の一端を外国人溶接工が担っていた実態を昨年、取材した。数十年続く廃炉作業は今後も難しい工程が待ち受け、人手も必要だ。第1原発で働く外国人は現在40人程度というが、日本人が集まらなければもっと多くの外国人を必要とするかもしれない。国策で原子力事業を進めてきた果てに、事故の後始末を外国人に担わせることを立ち止まって考えたい。

     「日本という国でやってしまった事故なのに、なんで日本人がもっと入れないのかと思いました」。2014年に外国人と働いた日本人作業員の男性は当時の戸惑いを口にした。男性は職場の先輩から「国の大義のある仕事だから頑張ってこいよ」と送り出された。だが汚染水対策の最前線の現場に入ると、配属された10人ほどのグループはブラジル国籍などの日系2、3世ばかりだったという。

     日系2、3世は定住資格が認められて就労制限がなく、自動車、家電の工場や建設現場で人手不足を補ってきた。資格は日本人の血が入っていない配偶者にも与えられ、日本に住んでも日本語の読み書きができない人もいる。

    汚染水対策切迫、事前教育足りず

     第1原発で働いた日系人溶接工の中にも「ローマ字しか読めない」とたどたどしい日本語で話す人がいた。日本溶接協会の資格試験は8カ国語に対応しているが、彼らが第1原発に入るための事前の放射線防護教育は日本語のテキストを使い、日本語による講習や試験しかなかった。

     彼らの話から浮かぶ14年当時の第1原発の作業現場は過酷だ。溶接作業は夏場でも防護服の上に防火服を着て手袋を何枚も重ねた。水分補給ができず熱中症と隣り合わせだった。急いでタンクを建設する必要があるため時間が惜しく、やむを得ず現場で用を足したと証言する人もいた。

     一方で事故直後に比べれば被ばく線量が低く、「放射能は怖くなかった」と答える人もいた。だが、現場で用を足すときに介護用のおむつを着けて肌をなるべく外気にさらさないよう気をつけていた日系人もいたという。周囲は「心配しすぎだ」と笑ったというが、彼にとっては少しでも身を守ろうとする必死の行動だったに違いない。引き受け手がない日本人溶接工の穴埋めをした彼らの日当は通常の現場の約1・5倍だった。

     そうした実態を報じた私の記事のコピーを、日系ブラジル3世のアンジェロ・イシ武蔵大教授(国際社会学)は、講義で学生約150人に配った。学生からは「日本人がやりたがらない仕事を外国人にやらせてしまうのは正しいのか」などと意見が寄せられたという。

     今後も第1原発の廃炉作業に外国人を従事させるのか。

     東電福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏・最高責任者は記者会見で「外国人だから働けないということはない」と答えた。一方で、汚染水対策にあたった日系人たちが、請負契約を結ぶ男性の下でなく溶接会社のもとで働く「偽装請負」の疑いがあると記事で指摘した点は否定した。だが、記事中で示した請負契約書は偽装請負を否定する東電側の説明と矛盾し、関係者が取材に本物と認めたにもかかわらず「存在を確認できなかった」(広報室)と答えるなど、東電の姿勢には今も疑問がぬぐえないままだ。

     原発で働く外国人の作業は、第1原発の廃炉作業に限ったことではない。事故前の通常運転時の定期検査でも、外国人が高線量下で働いていたという目撃証言を地元業者から聞く。だが、その実態はよくわかっていない。

    賃金格差背景にかき集める発想

     全国の原発作業員の被ばく線量を管理する放射線影響協会によると、11~15年度の5年間に第1原発を含む原子力施設で働いた外国人は延べ2159人。だが、事故後約10カ月間に収束作業にあたった人数は集計しておらず、2159人の中に含まれていない。また永住者や外国人技能実習生など在留資格の内訳についても把握していないという。内訳は各原子力事業者に聞いてもわからなかった。

     だが、汚染水対策にあたった日系人のように、教育体制が不十分なまま、日本人が不足した時に賃金格差を背景にかき集めればいいという発想では、外国人も働きに来なくなるだろう。原発による電気を消費してきた以上、原発が日本人だけでなく外国人の被ばく労働の上に成り立っていることを多くの人が知っておくべきだと思う。そして原子力事業者は、外国人がどのような環境で働いているのか、その状況を把握し、情報を開示すべきだ。

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