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平松 洋子・評『鯨を生きる 鯨人の個人史・鯨食の同時代史』赤嶺淳・著

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その身のすべてを利用し共に生きてきた「鯨人」の証言

◆『鯨を生きる 鯨人の個人史・鯨食の同時代史』赤嶺淳・著(吉川弘文館/税抜き1900円)

 鯨は、現代社会に何をもたらしたか。あるいは、鯨との関わりによって、私たちは何を失ったのか、失いかけているのか。これらの問いに対する答えを、社会学者である著者が明快に可視化する。本書は、捕鯨問題に囚(とら)われて見逃しがちな、鯨と私たちとの深い関係を問い直す重要な一冊だ。

 鯨とともに生きてきた人々、つまり「鯨人(くじらびと)」の声や気配が色濃く立ち上がる。社会学の方法論として三年間行われた、さまざまな地域で捕鯨や鯨産業に従事してきた個人史の採録。六様の人生から紡ぎだされる六人の語りに引き込まれる。解剖士、砲手、母船の「出稼ぎ大工」、市場での小売り主、加工製造業者、料理屋の女将(おかみ)。能(あた)う限り正確に採録された土地の言葉には、みっしりと持ち重りがある。

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