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斎藤環・評 『中井久夫集1 1964-1983 働く患者』=中井久夫・著

 (みすず書房・3456円)

脆弱性に照準した関係性の倫理

 中井久夫集全十一巻が出ると知って嬉(うれ)しい悲鳴を上げている愛書家は少なくないのではないか。評者も自分の書斎では、まさに座右の一角を「中井久夫コーナー」にあてている。ここに新たに十一巻ぶんのスペースを空けるのは容易なことではない。

 中井久夫と言っても、もはや知る人ぞ知る存在ではあるまい。党派性を超えた畏敬(いけい)のまなざしを向けるのは、同業の精神科医ばかりではない。本書に収録されたほとんどの文章を、評者はすでに繰り返し読んでいる。中には中井が三〇歳になったばかりの年に上原国夫の筆名で出版された『あなたはどこまで正常か』に収められた文章もある。この巻は中井の最初期作品群ということになるのだろうが、すでにして端倪(たんげい)すべからざる知性の片鱗(へんりん)が至るところに覗(のぞ)く。

 収録された文章のうち、個人的に思い出深いのは、「世に棲(す)む患者」「働く患者」の二編である。いずれも私の専門とするひきこもり臨床において絶大な影響をもたらした。この二編には、臨床家・中井の倫理のありかがはっきりと示されている。

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