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華恵の本と私の物語

/8 あのときすきになったよ

 「このなかにいますか?」

     先生せんせいかれて、わたしはまっすぐまえられない。教壇きょうだんからりてしたい。上級生じょうきゅうせいたちの視線しせんさる。

     「いません」と、りそうなこえこたえた。

     「はい、それでは失礼しつれいしました」

     先生せんせいはキビキビと廊下ろうかる。わたしはあわててあとをついていく。

     いじわるをしてくる上級生じょうきゅうせいがいる、と先生せんせいはなしたのは、昨日きのう放課後ほうかごだった。下駄箱げたばこくつすなれてきたり、学校帰がっこうがえりにわたしのリュックを突然後とつぜんうしろからってきたりする。まえしゅう一回程度かいていどだったのに、最近さいきんはほとんど毎日まいにち、だ。

     「名前なまえは? 何年何組なんねんなんくみ?」

     ……それは、らない。近所きんじょんでいて、ニカッとわら坊主頭ぼうずあたまおとこ、ということしからない。

     「大丈夫だいじょうぶ。どうにかしますよ」

     よわいものいじめが大嫌だいきらいな先生せんせいなら、きっとこらしめてくれる。おんな先生せんせいだけど、おこるとどのおとこ先生せんせいよりも迫力はくりょくがある。うちの三年ねん二組くみ先生せんせいは、最強さいきょうなのだ。

     

     でもまさか、朝礼ちょうれい時間じかんに、ひとつひとつの教室きょうしつまわることになるなんて。

     廊下ろうか先生せんせいった。

     「あなた、ちゃんとているでしょうね」

     こころおく見抜みぬくような、つよ視線しせん

     「てきとうに『ちがいます』とっていたら、もう一度いちど四年生ねんせいのクラスからまわることになりますからね」

     わたしはつばをごくりとんだ。

     五年ねん二組くみ教室きょうしつはいり、先生せんせい教壇きょうだんつ。

     「さぁ、どうですか」

     ゆっくり視線しせんげると……頬杖ほおづえをついているおんなうしろにふんぞりかえっているおとこ。まるで犯人捜はんにんさがしの雰囲気ふんいきにみんなちょっとムッとしているようにえる。

     やっぱりいない。

     とおもったら。

     窓際まどぎわに、まずそうにそとている坊主頭ぼうずあたまおとこがいた。

    「いましたか?」

     わたしがうなずくと、

    「わかりました」

     先生せんせいはゆっくりとひくこえった。

     昼休ひるやすみに職員室しょくいんしつへいくと、先生せんせいわきにあの上級生じょうきゅうせいっていた。

     「ごめんな。おれ、いじめてるつもりなんか、なかったんだよ」

     いまにもきそうだ。いつものかれとは全然ぜんぜんちがう。

     「ほかには」

     先生せんせいうしろからうと、

     「あと、おまえのこと、ガイジンってうのもやめるよ。ちゃんと、ハナエって、名前なまえぶ。ごめんな」

     それ以降いこうかれ学校帰がっこうがえりにわたしをかけると、「おいハナエ!」とぶようになった。それでいて相変あいかわらず、うしろからどついてくる。わたしは、やめてよ!とわらってかえす。ともだちに、なったのだ。不思議ふしぎだけど。

    +  +  +  +  +

     『あのときすきになったよ』では、主人公しゅじんこうおんな苦手にがてだったはずの「きくちさん」と仲良なかよくなります。ブランコにっていても、きくちさんは邪魔じゃまをしてきます。なぜ仲良なかよくなったのか、本人ほんにんにも、わかりません。

     おもしろいな。こういうことって、大人おとなになるとあまりないがします。


    『あのときすきになったよ』

    くんくみこ・さく 飯野和好いいのかずよし

    教育画劇きょういくがげき 1296えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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