連載

特集ワイド

「人だかりがする」ニュースを目指して、読み応え十分の記事をラインアップ。

連載一覧

特集ワイド

戦争になったらおしまいや 在日の詩人、金時鐘さんに会う

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
大阪・鶴橋を憂いを帯びた表情で歩く金時鐘さん。「平和が続けばええがなあ」=大西岳彦撮影
大阪・鶴橋を憂いを帯びた表情で歩く金時鐘さん。「平和が続けばええがなあ」=大西岳彦撮影

 どうなっているのか? そしてどうなるのか? 海ひとつ隔てた隣国の先が見通せない。朝鮮半島の北も南も祖国でありながら、愛憎半ばする思いで見つめる在日の詩人、金時鐘(キムシジョン)さんに会った。【鈴木琢磨】

金正男氏殺害「恥ずかしいて…」 「やっぱり話し合わなあかんよ」

 「恥ずかしいてなあ、ホンマ、恥ずかしいてなあ」。ここは大阪・鶴橋、チヂミを焼くゴマ油とキムチのにおう路地を歩き、88歳になる詩人がしきりにわびる。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、正男(ジョンナム)氏がマレーシアで猛毒VXによって殺害された事件のことだ。真相は謎だらけながら、北朝鮮の国家ぐるみの犯罪ではないかと、国際社会から疑念の目で見られている。「仰天するより、あきれかえって、恥ずかしいてしょうがないんや」

 すっと背筋を伸ばして歩く時鐘さんの姿にキムチ売りのおばちゃんは「あっ、詩人の先生や」と人なつこい。私にとっても時鐘さんは奥さんが切り盛りしていた近くの居酒屋でどこか申し訳なさそうな顔をして飲んでいたおっちゃん。だが、その顔のしわには苛烈な南北分断史が刻まれている。ふらっと昔ながらの焼き肉屋に入った。玄関先で流れていた桑田佳祐さんの歌う「LOVE KOREA」に吸い込まれるように--。

この記事は有料記事です。

残り2435文字(全文2981文字)

あわせて読みたい

注目の特集