メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

サンデー毎日発

全国2336高校「有名大学合格者数」伸びた学校は何が違うのか 東西進学校の「台頭力」比較

 10年前と今の難関大合格実績を比較すると、驚くほど合格者が増えている学校がある。その要因を探ると、教育態勢や生徒の頑張り、行政の施策などさまざまな要因が見えてくる。今春入試で合格者が伸びた学校はどのような要因があったのか、検証してみた。

     私立大志望者にとって今春入試は、志願者が増えた大学が続出した上に合格者数が抑えられるという二重苦となった。国立大の志願者は微減だったが、志願者が増えた東大をはじめ、難関国立大の敷居は相変わらず高かった。そうした状況の中、10年前との比較で合格者が増えている学校を検証した。

     東日本で最も伸びたのは大宮開成だ。早稲田大と上智大が大幅増など、昨年に引き続き高い難関大合格実績を上げた。安田教育研究所代表の安田理さんはこう話す。

    「2005年に中学が設置され、一貫教育がなじんできた頃です。進路指導のノウハウが確立したことが合格実績の伸びにつながっているのでしょう。合格実績の向上に伴い優秀な受験生が集まると、まだ伸びしろがありそうです」

     旧帝大の合格者が、ゼロから東大4人を含む11人に増えた東京農大第一も、05年に併設中学を設置している。もちろん、一貫校にしたからといって、全ての学校で難関大合格者が増えるわけではない。東大や京大が一般入試以外の方式を取り入れるなど入試が多様化する中で、生徒に合った入試を選択するなど、進路指導の力が問われているようなのだ。

     6年間のゆとりを生かして、教科学習以外のプログラムを充実させられることも中高一貫校の特徴。東大や京大、早慶に多くの合格者がいる広尾学園の「医進・サイエンスコース」では、サイエンスラボにおける日常的な研究活動に加え、研究者の講演や外部研究施設での活動を行っている。前出の安田さんは言う。

    「生徒が興味を持つさまざまなプログラムで知的好奇心を刺激することにより、難関大入試に向かうモチベーションが育まれます。洗足学園や鴎友学園女子も知的好奇心を喚起する学外プログラムに力を入れ、難関大合格という結果を出している学校です」

     もちろん、公立校でも海外留学やトップ研究者を招いた講演など、さまざまな取り組みを行い、成果を上げている学校は多い。しかし、そうした取り組みをより効果的に行うには、ゆとりがある一貫校にアドバンテージがあるようだ。

     公立校では横浜翠嵐が東大30人増など、難関大合格者が増えている。同校の進路指導教諭は、「中高一貫校に比べて短い期間で受験を迎えるので、入学時から難関大入試に向けたモチベーションを高め、うまくいったことが、難関大合格者が増えた一因」と話している。そうした取り組みができるのも、ベースとなる優秀な生徒が入学していればこそ。神奈川は通学区制などの影響で、公立トップ校の難関大の合格実績が低迷した時期があったが、学区撤廃や学校独自の入試問題を作成するなど、優秀な生徒を選抜する仕組みができたことが功を奏した。

     公立校でそうした仕組みを作れるのには、行政のバックアップがある。表に出てくる公立校では、横浜翠嵐と川和が「学力向上進学重点校」、新宿が「進学指導特別推進校」で三田が「進学指導推進校」、千葉東が「進学指導重点校」、県立浦和が「未来を創造するリーダー育成推進プロジェクト」と、すべてが難関大進学に力を入れる学校として指定されている。

    「難関大合格実績が伸びている公立校は、進学指導重点校など行政が合格実績向上の後押しをするケースが大半。指定されることで、進路指導教諭の連絡会などで情報を共有できることが、難関大合格実績がアップする要因です」(前出の安田さん)

     西日本に目を転じると、難関大合格者が増えている学校は私立優位の東日本とは対照的に、市立西宮や生野、西宮東など公立が大半を占める。これらの学校の合格者増も行政の施策によるところが大きい。

     大阪は14年に通学区を撤廃し、兵庫は10年に総合選抜を廃止した。総合選抜とは受験生の意向にかかわらず、入試の成績で自動的に進学先を割り振る制度。廃止の影響が大きかったのは、表中の国公立大の合格者が24人から87人に増えた市立西宮だ。同校進路指導部長の青木公明教諭は言う。

    「勉強だけではなく部活動や学校行事にも積極的に取り組む、本校の姿勢に共感する中学生は多くいます。総合選抜の廃止でそうした受験生が増えました。部活動や学校行事を全力でやりながら難関大に合格するのは大変ですが、意識が高い生徒一人一人に、教員が寄り添うことで、合格者が増えているのです」

     兵庫では西宮東や御影、宝塚北なども難関大合格者が増えている。兵庫の通学区は、15年入試から16から5学区に拡大しており、より高校選択の幅が広がった。これからも合格実績が伸びる学校が増えそうだ。

     京都の学校では山城が文理総合科、桃山は自然科学科といった、進学に特化した全府から募集可能な専門学科を設置している。かつては、堀川や嵯峨野が専門学科の設置により難関大の合格実績を伸ばした。西京は併設中学を持ち、中高一貫教育を行っている。

    私立大合格者減少は進学校としての成熟

     大阪は学区撤廃に加え、進学に特化した文理学科を設置するグローバルリーダーズハイスクール(GLHS)として、府立10校を指定している。表中には生野、四條畷、高津の3校が入っている。一方、GLHSに指定されている学校でも、北野や天王寺といったトップ校は表に掲げた大学の伸びしろが小さい。同時期の旧七帝大の合格者は、北野が95人から156人、天王寺は71人から104人に増えているが、関西大や同志社大、立命館大といった近畿圏の有名私大の合格者が横ばいから減少しているためだ。

    「大阪の府立トップ校の生徒は国立大志向が強く、現役時は難関国立大しか受験しないケースも少なくない。私立大の合格者が減っているのは、進学校としての成熟度を示しています」(近畿圏の塾関係者)

     西日本で合格者が伸びている私立校が少ないのは、トップ私立校の合格実績は高止まり状態で、伸びしろに乏しいためだ。さらにそうしたトップ校のポジションが盤石のため、他の私立校が伸びる余地がないという状況もある。前出の安田さんはこう話す。

    「首都圏の私立中入試は日程が複数あり、バランス良く受験します。そのため、良い教育を行う学校には優秀な生徒が集まり、難関大合格実績が伸びます。一方、近畿圏のトップ中学の入試は原則的に統一日程で、他の私立中の選択肢が少ないため、だめなら公立を視野に入れるケースが多く、難関大合格実績が大きく伸びる学校が出にくいのです」

     表には出てこないが、西日本のトップ私立校を見ると、灘は表に掲げた大学全体の合格者が減っているが、旧七帝大に限ると150人で4人しか減っていない。甲陽学院は全体では減っているが、旧七帝大に限ると121人で4人増だ。東大寺学園や洛星、西大和学園なども、難関国立大合格者が高値安定で私立大の合格者が減るという、同様の傾向が見られる。

     そうした中、表に掲げた国公立大の合格者が50人以上増えるなど、難関大の合格実績の伸びが顕著なのは須磨学園。04年に中学が設置された学校であり、東日本の大宮開成や東京農大第一と同様に進路指導のノウハウが蓄積されたことが、難関大合格実績が上がっている一因のようだ。

     中学校や高校選びの際、直近の合格実績を重視しがちだが、難関大の合格実績が変化している学校は数多くある。その背景には教育態勢や自治体の施策の変化などさまざまな要素があり、そうした視点から今後の可能性を探ることも、学校選びの重要なポイントとなる。【大学通信・井沢 秀】

    *週刊「サンデー毎日」4月16日号から転載。全国2336高校有名107大学合格者数の表は実際の誌面で確認してください。

    おすすめ記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 小田急線が脱線 踏切で乗用車と衝突 本厚木-伊勢原間で上下運転見合わせ
    2. 大麻所持 容疑で愛知の少年逮捕 岐阜中署 /岐阜
    3. 新潟県下越で震度6強 新潟、山形、石川に一時、津波注意報
    4. 意識不明の巡査 手術で快方に向かう 拳銃強奪
    5. 山形・鶴岡の酒蔵、酒瓶1000本以上割れる 新潟震度6強

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです