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余録

「詩といふものは…

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 「詩といふものは/どんなものでもありうる。/けれどもそれは、/結局のところ何ものかへの/心潜めた呼びかけでなければ、/詩である必要もない」。大岡信(おおおかまこと)さんがある詩集のあとがきにかえて載せていた詩だ▲大岡さんが孤立した自我の営みとしての文芸より、多彩な個性が交歓する日本の連歌(れんが)や連句(れんく)の伝統を好ましく感じていたのもよく分かる。それらの集まりは長短の句のやりとりを通し、お互いの創造性を発見し合う「うたげ」だった▲足かけ29年に及んだ朝日新聞の1面連載「折々のうた」も、大岡さんによれば連句の骨法(こっぽう)によって続けられたという。前の句を受けたり、合わせたり、飛躍したりして句を付けていく連句のやり方にならってうたを選んでいったのだ▲いわば古今の歌人、俳人、詩人たちと新聞の読者をとり結んだ壮大な「うたげ」である。一方、詩人としての大岡さんは古典的な連歌や連句にとどまらず、現代詩人による「連詩」にも取り組み、やがては世界に広めることになった▲「我々の試みは、全く自然に、西洋現代詩の伝統に書き加えられるべきものだ」。連詩に加わったメキシコの詩人、オクタビオ・パスはいう。大岡さんの詩の共同制作は、現代美術、現代音楽など分野の違う芸術との間でも試みられた▲掘り起こされた古今の詩歌の富、人から人への呼びかけが生んだ言葉の宝をこの世に残し、大岡さんが旅立った。今ごろは天国での「うたげ」で名だたる東西の詩人たちの歓待を受けているだろうか。

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