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中村桂子・評 『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』=今野勉・著

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 (新潮社・2160円)

つきつけられたほんとうの賢治像

 宮沢賢治の作品はなぜか何かあった時に読みたくなる。最近で言うなら東日本大震災の後、全集を開いた。けれども、宮沢賢治という人に入り込むのは避けてきた。隣にいたらちょっと困った人なのではないかと勝手に思ってきたのである。そこへドカンとつきつけられたほんとうの賢治像(「ほんとう」は賢治の大切にしている言葉だ)に、なんとなく避けるなどと言っていてはいけないと思い知らされた。

 著者は長い間賢治と向き合い、すでに四人の賢治と出会ってきた。「生命の伝道者」、「農業を信じ、農業を愛し、農業に希望を託した人」、「野宿の人」、「誰にも理解できない言葉を使う人であり、子供のお絵描きのように詩を作る人」だ。充分な宮沢賢治像である。ところが、初めて読んだ文語詩の中に、別人のような賢治を見出すのである。

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