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私の出発点

村田喜代子さん『熱愛』 じっと見るうちに崩れ

村田喜代子さん

 新田の身におこったことがふつうでないのはもう否定できない。ここに着いて二時間が過ぎていた。かれの不在はもう確定的だった。ぼくはふらつく頭でしかし問題をまとめにかかる。事故だろうか。いまじぶんが通ってきたコースのいくつかのきわどかったカーブの光景が瞼(まぶた)にやきついていた。(『八つの小鍋 村田喜代子傑作短篇集』文春文庫より)

 「私は『空想』が嫌いです。ヘリコプターでいきなり山頂へ連れていかれるようなもので、登る過程がないから。私は事実に基づく『想像』で小説を書いてきました」。特異な作風と評される。なにしろ「人間関係」に拘泥しない。死にまつわる情念や男女の性を通して人間存在の謎に迫る純文学とは目指す世界が違う。そんな作家の事実上のデビュー作が短編「熱愛」だ。

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