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<推計人口>50年後3割減 識者に問う

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 国立社会保障・人口問題研究所が10日公表した、2065年まで50年間の将来推計人口によると、50年後の合計特殊出生率は1・44と、12年の前回推計より上向くと予測したものの、総人口は53年には1億人を割り、65年には3割減の8808万人になると見込んだ。速度を緩めつつも、人口減少と高齢化が進むことに変わりはない。かつて経験したことのない人口減社会にどう向き合うべきか、識者に聞いた。【細川貴代、山田泰蔵】

中高年・女性活用を 経済協力開発機構(OECD)東京センター長・村上由美子さん

 日本は大変厳しい人口減少社会を迎えることが分かった。しかし今後は、人口減よりも速い速度で情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などの技術革命が進む。多くの仕事が自動化され、働き方も変えざるを得ない。日本にはAIやICTに対応できる高い能力のある人材が多い。特にこれまで社会で活躍できなかった「眠れる人材」を生かすことが、この困難を乗り切るカギだ。

 その代表が中高年齢層だ。日本の中高年齢層の能力は高く、OECDの国際成人力調査(PIAAC)では、読解力、数的思考力の2分野で、トップレベルだった。日本の高度な基礎教育システムと、企業の職業訓練などがその理由だ。若者が減る中、中高年齢層にICTなど、社会で新たに必要とされる技術を習得してもらい、能力を発揮できる仕事に就いてもらう仕組みを考えるべきだ。これは世代間の能力格差が大きい諸外国では考えられない、日本の強みだ。

 また日本女性の読解力、数的思考力は調査国中、最も高かった。それなのに女性は出産や育児で離職することが多く、一度辞めると再就職が難しい。中高年は年齢によって活躍の場が奪われ、多くの企業が年功序列制で、若手で能力がある人に責任ある仕事を任せることも難しい。人材が有効に使われていないのが日本の現状だ。宝をうまく生かせば日本経済は変わる。

 人材を最大限生かすには、雇用の流動性の促進が不可欠だ。競争原理が生まれ、社員の再訓練の動機も生まれる。転職や起業が可能な社会はイノベーション創出にもつながる。

 改革には痛みを伴うかもしれないが、政府はセーフティーネットを用意して早急に進める必要がある。そうすれば、人口減は日本の再成長のための武器となるだろう。

少子化対策着実に 明治大教授(人口経済学)加藤久和さん

 50年後に人口が8000万人台まで減ると聞くと、今の社会のまま比例的に縮小するとイメージしがちだが全く違うと意識すべきだ。65歳以上の高齢者は総人口の約4割を占め、高齢化がかなり進んだ社会になる。日本は1967年に1億人を超えたが、若い人がたくさんいて活気のある60年代の1億人ではなく、シルバーグレーの1億人になる。今のシステムを維持すれば、出口がないような社会になるという悲観的な危機感がある。

 二つの視点で考えるべきだ。まず出生率を上げることは当然必要だ。安倍政権が目標に掲げる希望出生率1・8は通過点で人口を維持するには2・07が必要だ。諸外国の例からも、さまざまな少子化対策を行えば効果が上がるのは明確だ。

 もう一点は人口減少や高齢化はすぐに止まらないということだ。急に出生率が上がったとしても、今年生まれた子どもが労働力になるには20年かかる。一方、第2次ベビーブーム世代が高齢者層になる42年までは高齢者人口は増え続ける。すなわち、この先20~30年間の社会を維持するため、目の前の戦略を考えておかなければならない。

 少子化対策としても成長戦略としても働き方改革や女性活躍、高齢者活躍、外国人の受け入れなど、安倍政権が打ち出している方向性に間違いはない。国が出生率1・8と具体的な目標を掲げて議論したことはこれまでなかった。掛け声にとどまることなく、しっかりと進めることが重要だ。

 少子化対策の財源や社会保障の負担の話になると、高齢者と若者の二元論になりがちだが、余裕のある高齢者もいるし、貧しい若者もいる。例えば、年金ではカナダのように所得の高い人には払い戻してもらうなど、限られたパイをどう分け合うかを議論すべきだ。


生産年齢人口は減少一途 上昇続ける平均寿命

 2015年の日本の平均寿命は、男性80・75歳、女性86・98歳で過去最高を更新した。今回の推計でも、平均寿命は今後50年間、一貫して上昇し、65年には男性84・95歳、女性91・35歳になるとした。

 このまま長寿化が進めば、100歳を超える人も目立って増えていく。100歳以上の人は15年は6万2000人、総人口に占める割合は0・05%程度だ。これが今回の推計では、40年に30万9000人、65年には15年の約9倍にあたる54万7000人まで増加し、総人口に占める割合も0・62%まで上昇するとした。

 高齢化と少子化で人口構造も大きく変化する。0~14歳の年少人口と15~64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどる。年少人口が総人口に占める割合は15年の12・5%が65年には10・2%に、生産年齢人口は60・8%が51・4%にまで低下する。人口が突出して多い第2次ベビーブーム世代が高齢者層に入ることから、65歳以上の老年人口だけが42年までゆるやかに増加する。

 高齢化率は15年の26・6%から上昇が続き、65年は38・4%になる。日本の高齢化率は現在、先進諸国の中で最も高くなっているが、この傾向は50年後も変わらない。

 人口ピラミッドで見ると、15年から65年にかけ、低い出生率のもとで各世代とも人口規模が縮小していく様子が反映されている。15年は生産年齢層が厚いが、65年には高齢者層が厚くなり、裾野がより狭まった不安定な形に変化していく。


 ■人物略歴

むらかみ・ゆみこ

 国連勤務などを経て2013年から現職。著書に「武器としての人口減社会」


 ■人物略歴

かとう・ひさかず

 元国立社会保障・人口問題研究所室長。近著に「8000万人社会の衝撃」

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