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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「イモ」といえばジャガイモか…

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 「イモ」といえばジャガイモか、サツマイモか、サトイモか。40年近く前の方言調査では、関東や中部地方のサトイモをはさんで東日本がジャガイモ、西日本がサツマイモで、ただ九州はサトイモの地域も多かった(徳川宗賢(とくがわむねまさ)著「日本の方言地図」)▲ことジャガイモは200近くの呼び名が全国に複雑に分布していたという。ジャカルタに由来するジャガタライモ系の名前や、形状を示す馬鈴薯(ばれいしょ)系のバレージョなどという呼び名の他にも地名や人名などにちなむ多彩な方言があった▲ニドイモは二期作、ゴショーイモは収穫量の多さ、セーダイモは普及に尽力した代官・清太夫(せいだゆう)の名、シナノイモは地名の信濃にそれぞれちなんだ名である。キンカイモは形状からついた名でキンカとは中国地方ではげ頭の意味という▲単にイモだけというのは産地の北海道である。昨年、その産地を襲った台風被害によるジャガイモ不足で、大手メーカーのポテトチップスの一部商品が販売休止になった。ネットでは人気商品にプレミアム価格がつくありさまである▲間もなく九州の産地の収穫期だが、メーカーの必要量の確保は難しく販売再開の見通しはつかないらしい。また今年の作付けが始まる北海道の農家ではやはり不足している種イモの確保に懸命という。ポテチ好きには試練の春である▲かつての飢饉(ききん)で多くの人命を救ったジャガイモの異名には「お助け芋(いも)」というのもあった。あらためてそのありがたさに目を開かせてくれた平成のポテチ飢饉である。

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