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届かぬ支援 避難生活続く障害者の声は

バリアフリー対応の仮設住宅に入居した作本誠一さん=熊本県益城町で2017年4月10日、後藤由耶撮影

 「避難できる避難所が見つからず不安になった」「障害者は事実上(支援の輪から)排除されている」--熊本地震発生から1年。現地で障害者やその支援者を訪ねると、口々に被災後に直面した困難を語ってくれた。大規模災害発生時、障害者にはどのような支援が必要なのか? 当事者の声を集めた。【写真映像報道センター・後藤由耶】

「バリアフリーの避難先が見つからない」

 熊本県益城町の作本誠一さん(50)は地震で自宅が全壊した。19歳の時に頸椎(けいつい)を損傷。首から下がまひし、車いす生活を送る。隣接する熊本市や益城町内の避難所を経て昨年11月、町内にようやく完成したバリアフリー対応の福富仮設団地に移った。

 避難生活は苦労の連続だった。地震発生後、体育館や町の施設を転々とした。トイレや入浴の介助が必要で、自分では起き上がることができない。電動ベッドが欠かせず、受け入れてくれる避難所探しは容易ではなかった。最初に避難した熊本市内の高校の体育館ではトイレが使えず、やむなく携帯用トイレを使った。

 「条件の合う避難先が見つからず、時間だけが過ぎて不安になった」と振り返る。昨年7月、益城町内の総合体育館に障害者トイレがあり、自宅から運び出した電動ベッドが置けることが分かり、同年10月末まで過ごした。

 総合体育館に移った頃、町内に完成した仮設住宅も見学した。しかし、室内は狭すぎて段差があり、車いすの障害者は入居できなかった。そこで町にバリアフリー対応の仮設住宅の建設を要望。仮設住宅としては最も遅くなったが、6戸が建設された。ようやくストレスのない生活を送れるようになったが、住民は障害者だけで、災害時の対応に不安もあるという。

「災害は平等、避難生活は不平等」

 「くまもと障害者労働センター」代表の倉田哲也さん(50)は脳性まひの障害がある。地震発生直後、センターを自主避難所にして障害者を受け入れ、多いときには10人ほどが寝起きした。行政からの支援はなかったが、全国の福祉関係者が駆けつけ、炊き出しなどの支援をしてくれた。

 一般の避難所は列に並べる人しか配給がもらえない仕組みになっていたり、手話通訳がいなかったり、建物がバリアフリーになっていなかったりするなどの問題点があった。

「くまもと障害者労働センター」代表の倉田哲也さん=熊本市で2017年4月11日、後藤由耶撮影

 「災害は平等に来るけれど、避難生活は平等ではないことを(障害者は)体験した」と倉田さん。災害時の仕組みは障害者を想定せずに作られていると指摘する。

「障害者は見えない存在」

 熊本学園大教授で弁護士の東俊裕さん(64)は幼児期のポリオ罹患(りかん)の後遺症で車いす生活を送る。益城町の北に位置する菊池市の自宅で本震を経験した。

「被災地障害者センターくまもと」事務局長の東俊裕さん=熊本県益城町で2017年4月11日、後藤由耶撮影

 東日本大震災発生後、内閣府「障がい者制度改革推進会議」の担当室長として、被災地で障害者の状況を調査。支援の輪からこぼれ落ちる様子を見てきた。その経験から、熊本地震では発生後1週間ほどで「被災地障害者センターくまもと」を設立した。

 事務局長として、主に在宅避難者のため、困りごとの相談や支援物資の提供、各種申請への付き添いなど、500人以上の支援の先頭に立ってきた。活動を通じ、「障害者が見えない存在となっている」と感じた。被災行政で障害者の存在が想定されていない現状は、東日本大震災後も何も変わっていないと話す。

 熊本地震後、避難所では障害者を巡るトラブルが多発した。ある発達障害の子どもは配給の列に並べずに配給をもらえなかった。聴覚障害者は配給などを知らせる放送が聞こえずに孤立しがち。視覚障害者は夜間、トイレに行く途中で就寝中の人にぶつかることもあった。

 東さんによると、こうしたトラブルが原因で避難所を離れ、長期間の車中泊や地震で損傷した自宅での生活を余儀なくされた障害者やその家族も多かったという。

 熊本地震直前の昨年4月、障害者差別解消法が施行され、行政には障害者への合理的配慮が義務づけられた。東さんは地震発生後、作本さんの支援で仮設住宅を調べたが、車いすでの使用は想定されていなかったという。「熊本県には車いすの障害者がいないかのごとき設計だった」と憤る。

 東さんは、東日本大震災や熊本地震の経験を生かし、災害時の障害者への支援対応をまとめたマニュアルを作成する必要性を強調。災害時に特化した障害者への支援について、災害対策基本法や災害救助法を改正して位置づけていくことが必要と訴えている。

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