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華恵の本と私の物語

/9 宇宙のみなしご

 今夜こんや遠藤えんどうからメールがきた。

     -おかあさんにあたらしいおとこができて。いっしょにもうってはなしてる。

     -遠藤えんどう賛成さんせいなの?

     -いやってえないっしょ。こうにはオレよりちいさいむすめ息子むすこがいて。そいつらもいっしょだって。

     -そっか。

     メッセージが、途切とぎれた。携帯けいたいをパタンとじると、バイブがまたった。

     -れる?

     時刻じこくは12時半じはんははとなり部屋へやでぐっすりている。でも……。

     -いいよ。

    おもって返事へんじおくった。

     玄関げんかんのドアには、ははのつけたすずがある。めするとき、いつもチリーンとる。わたしはサンダルをもって、ベランダにまわった。ここが1かいでよかった。室外機しつがいきあしをかけ、すりをえる。生垣いけがきえだが、バキバキッとれた。とおりにて、スエットについたつちはらい、公園こうえんかってはしりだす。

     遠藤えんどうは、公園前こうえんまえのベンチにこしかけていた。いきととのえながらちかづき、となりすわる。公園こうえん時計とけい文字盤もじばんが、満月まんげつみたいにぽっかりあかるくかんでいる。

    「ハナエ、元気げんきだった?」

     高校こうこう別々べつべつになったので、うのは2カげつぶりだ。

    「うん……メールにいてたおとこひととかとむってことは、すの?」

    「いや、いまのままかな。あと、今度こんどから晩飯ばんめしつくりょうえるな」

    「いつも遠藤えんどうつくるの?」

    「おかあさんのかえりがおそいからね。あーぁ、はやはたらけるようになりたい」

     遠藤えんどうは、深呼吸しんこきゅうをした。

    あたらしいおとうといもうとか。遠藤えんどう面倒見めんどうみるの?」

    「まぁそうだろな」

     すこしの、沈黙ちんもく

    「ハナエ、ありがと。また話聞はなしきいてもらっていい?」

     うん、とこたえた。こい、ではない。ともだち、でもないのかな。

    「うん……じゃ」とわたしはがる。

     時間じかんまった。

     身体からだかたまって、うごけない。わたしは遠藤えんどううでにすっぽりつつまれていた。

     どれくらいたったのか。頭上ずじょうでガチャッというおとこえた。時計とけいはりすすおと。わたしたちは自然しぜんはなれた。

     それ以来いらい遠藤えんどうとのメールは途絶とだえた。

     大学生だいがくせいになっても、ときどき、深夜しんやにベランダにてみた。でも、てこれる?というメールはだれからもこない。

      + + + + 

     『宇宙うちゅうのみなしご』では、中学生ちゅうがくせいたちが、深夜しんやにこっそりいえして、近所きんじょ屋根やねのぼります。そこから夜空よぞらまちながめます。

     よるには、なに不思議ふしぎ魔法まほうがあるのでしょう。

     遠藤えんどうはあのときのことをおもすことはあるのかな。いまでもたまにおもうのです。


    宇宙うちゅうのみなしご』

    森絵都もりえとちょ

    角川文庫かどかわぶんこ 475えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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