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余録

彼女の奇妙な体験は…

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 彼女の奇妙な体験は、深い穴に落ちたことから始まる。穴に導いたのは、人間の服を着た白いウサギだ。1865年に発行されたルイス・キャロルの児童小説「不思議の国のアリス」である▲深い穴へ若い女性を誘うウサギは、今日の日本にも生息するようだ。街角で、モデルやアイドルにならないかと声をかけ、全くの別世界へ引き込む。アダルトビデオ(AV)への出演を強要される被害が出ているから恐ろしい▲特別な女性が狙われるのではない。政府の調査によると、15~19歳の5人に1人、20代の4人に1人がスカウトに勧誘されていた。そのうち「詳しい話を聞いた」と答えた女性は、10代で3人に1人、20代で4人に1人に上る▲この「話を聞く」が入り口となり、深い穴へ追い込まれる女性たちもいる。「親にばらす」「違約金を払え」と脅され、誰にも相談できぬまま暴力的な撮影をされ続ける。インターネットに載った動画は暴走し、消去は極めて困難だ(宮本節子(みやもとせつこ)著「AV出演を強要された彼女たち」)▲内閣府男女共同参画局は、特に地方の若者が都会に出てくる4月を、被害防止月間に定めた。被害に遭わぬよう、遭っても1人で悩まぬよう、情報提供などに本腰を入れる▲物語のアリスが迷い込んだ先は夢で、悲鳴を上げると目が覚めた。AV出演強要の被害者は、消えない記録と記憶に苦しみ続ける。まずは危ないウサギに耳を貸さぬことだが、もしも穴に落ちたら、助けを求めよう。悪いのはあなたではない。

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