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元除染作業員が1次下請け会社を提訴へ 

除染作業で負った自身のけがの写真を見る男性

直接雇用主の東京都の2次下請け会社が倒産で

 環境省による東京電力福島第1原発周辺の除染事業で、作業中の事故に遭った元作業員の男性(49)が、愛媛県の建設会社を相手取り、逸失利益の賠償や慰謝料を求めて近く横浜地裁に提訴する。直接の雇用主である東京都の2次下請け会社が倒産したため、1次下請け会社への提訴を決めた。除染事業では復興需要に合わせた小規模業者の一時的な参入や撤退が多く、労災事故の被害回復にも影響が出ている。【関谷俊介、宮崎稔樹】

 代理人弁護士によると、男性は福島県富岡町の除染作業に従事していた2014年12月、鉄製のトラック荷台の一部が落下する事故に遭い、右足骨折の重傷を負った。

 だが雇用主の2次下請け会社は、実際の事故現場から離れた場所にある資材置き場で事故が起きたとする虚偽の労災保険の申請書を労働基準監督署に提出した。この虚偽報告について、富岡労働基準監督署は16年、法人としての2次下請け会社と、現場責任者を労働安全衛生法違反容疑で書類送検し、いわき簡裁が罰金10万円の略式命令を出している。虚偽申請は元請けのゼネコンに迷惑が及び、仕事がもらえなくなることを恐れたためとみられている。

 男性は、事故で障害を負い、作業員として働くのが困難になったことや、会社による虚偽の報告によって精神的な苦痛を受けたことの補償を雇用主の2次下請け会社に求めようとした。ところが会社は15年6月に破産手続きに入り倒産。同社に仕事を発注した1次下請け会社を提訴することにしたという。「1次下請け会社も、作業員を指揮・監督していたのだから安全に配慮する義務があった」と主張し約1800万円を求める考えだ。

 1次下請け会社は毎日新聞の取材に「係争中につきコメントは控える」と答えた。環境省による除染事業は、3月に帰還困難区域を除いて完了している。

 除染や原発作業員の支援団体「被ばく労働を考えるネットワーク」によると、除染事業には元請けの工事関係書類にも名前が出ないような末端業者が多く社会保険にも加入していないため、労働者が不安定な労働環境に置かれているケースがよくみられるという。

「労災で泣き寝入りの作業員、他にも」

 男性は、毎日新聞の取材に事故の経緯を語った。

 除染作業の現場でけがをした日、雇用主の会社に電話で報告すると「現金で処理するから」との返事だった。翌日、病院で右足の甲を骨折していることがわかった。右足を引きずり、重機に乗って作業を続けた。1週間後、全身の震えが止まらなくなり、右足は紫色に変色して腫れ上がっていた。医師からは「傷口から細菌が入り、壊死(えし)を起こしている」と告げられた。約10日間入院し治療を受けた。

 自力で治療費を賄えないことを会社に相談すると、事故現場とは異なる場所を現場とする労災保険の申請書が会社から送られてきた。この虚偽申請について男性は「仕事の元請けに迷惑がかからないよう、除染作業の場所で事故が起きたことを隠すことが目的だったのではないか」と振り返る。申請書には「(現場では)安全衛生責任者が指導していました」と自分の記憶とは食い違う記述もあった。男性は治療後も右足の指が動かず、中腰になっての作業ができないという。

 震災で家族を亡くした岩手県の知人を見舞い、被災地を目にしたのを機に、除染の仕事に携わるようになった。「私だけの問題でなく、労災で泣き寝入りしている作業員はいると思う。被災地の力になりたいという気持ちはあるが、この件を決着しないと前に進めない」。男性は怒りをこらえるように語った。【関谷俊介】

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