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大空へ再び~コウノトリ・トキ・アホウドリ~

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コウノトリ空へ 1988人工ふ化

松島興治郎さん=2年連続ヒナ誕生のコウノトリ飼育員

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 (まつしま・こうじろう=兵庫県豊岡市生まれ。豊岡高校卒。昭和40年以来、同市野上にある特別天然記念物・コウノトリ飼育場の飼育員。48歳。)

 ほとんど家に帰ることはない。「朝四時には、カタカタと親鳥が嘴(くちばし)でケージをたたく音で目がさめるんですよ。それからエサをやりにいって」

 管理棟に宿直用のベッドはないが、物置を改造した人工育すう部屋に畳一枚を持ち込み、毎夜ヒナたちと寝る。昨春、飼育場開設以来初めて三羽のヒナが誕生したころは近寄るのも怖いほど緊張した顔つきだった。ところが二年連続で、しかも六羽ものヒナが育つこの春は自信と余裕がうかがえる。

 飼育場がある兵庫県豊岡市の円山川右岸一帯は戦前まで、日本一のコウノトリ生息地だった。農薬でエサのドジョウが減る、ねぐらになる山の伐採が進む、田んぼが少なくなる――繁殖数が激減し始めたころは高校生。生物部に所属して「国際コウノトリセンサス」に参加した。「自転車に乗って何十キロも離れた町にまで、飛ぶコウノトリを夢中で追っかけたこともありますよ」

 高校卒業後は農業をしながらコウノトリ保存会に加わり、人工巣塔を建てたり、ドジョウを広く市民から集める「一人一匹運動」に加わったりしてきた。昭和四十年、飼育場開設間もなく、飼育員として迎えられた。

 「ヒナ誕生」を夢に見て二十数年。文字通り心血を注いできたが産卵はしても無精卵だったり、東京・多摩動物公園に先を越されて(六十三年)、悔しい思いをしたこともあった。それだけに産卵からヒナ誕生、そして今年が初めての人工ふ化――育すうで、家に帰るどころではなかった。

 絶滅の危機にあるコウノトリ。「このヒナたちが成鳥となり、自分たちのヒナをかえすようになって初めて増殖にメドがついた、といえます」と慎重そのもの。(桜井 一郎)

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