連載

アンコール

あの感動の調べをもう一度。注目公演の模様を鑑賞の達人がライブ感たっぷりに再現します。

連載一覧

アンコール

ウィーン国立歌劇場「アンナ・ボレーナ」 最後に見せた新しさ

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 主人公が正気を失うオペラは「ルチア」や「夢遊病の女」などよくある。しかし、ドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」においても、そこに重大な意味が込められていることには、あまり意識が向いてこなかった。それに気づかせてくれたのは、ソプラノのエディタ・グルベローヴァである。ウィーン国立歌劇場来日公演の最終演目として上演された「アンナ・ボレーナ」は、グルベローヴァの日本における最後の公演という彼女自身の宣言もつき、東京文化会館は満席の熱気にあふれていた(10月31日所見)。

 悲しいオペラである。国王のエンリーコ8世(イギリス国王ヘンリー8世)は、王妃アンナに仕える女官のジョヴァンナ・シーモアを愛人にし、次の王妃にしようとする。アンナのかつての恋人リッカルド・パーシー卿や、アンナに思いを寄せる楽師のスメトンを利用してアンナの不貞をでっちあげ、アンナを処刑に追い込む。実は、アンナにもジョヴァンナにも国王との関係に功利的な要素もあり、国王自身、疑心暗鬼の悩みも抱えている。

この記事は有料記事です。

残り505文字(全文938文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る