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「声上げることで変わってきた」 共同代表理事・杉山文野さんに聞く

「声を上げることで変わってきた」と話す東京レインボープライド共同代表理事の杉山文野さん(提供写真)

 大型連休中の東京都内で、性的少数者への理解を深めるためのイベント「東京レインボープライド2017」が開かれている。最終日の7日にはパレードが行われる。今年で6回目で協賛企業や参加団体は過去最多の規模。イベントの共同代表理事、杉山文野さん(35)に、性的少数者を取り巻く社会の変化や思いを聞いた。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

 --今年のテーマは「CHANGE-未来は変えられる-」です。杉山さんが感じる「CHANGE」とは?

 僕は06年に性同一性障害(GID)であることを書いた本を出版しているんですが、別に世の中を変えたいと思って本を出したわけではないんです。セクシャルマイノリティー(性的少数者)と言うと、みなさん芸人さんのような特別な存在をイメージするけれど、もっといろんなところにいるのだと、みんなの隣にいるような存在なのだと伝えたかった。

 僕は今でこそ「活動家」という肩書で紹介されていますが、僕は誰よりも「普通」に生きたかっただけ。それが、「僕は僕だ」と言葉にしたら、結果として活動になっちゃったんです。

 ただ、改めて振り返ると、「変わらない」と思っていたことが、僕らが声を上げることで少しずつ変わってきた。本を出した当時は、GIDやLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとった性的少数者を表す言葉)なんて言葉はほとんど知られていませんでしたからね。今では企業や行政、メディアに取り上げられるようになり、毎日のようにLGBTという言葉を聞きます。当時は、こんな時代がくるとは想像もしていませんでしたね。

 だから「CHANGE」というテーマは、僕が本当に今感じていること。声を上げることの大切さを、今ひしひしと感じています。

家族連れが増え子どもが楽しめるイベントに

 --協賛企業や参加団体が過去最多の規模ですね。6年前と比べて、どのように変わったのでしょうか。

 圧倒的に家族連れが増えた印象です。

 以前は子どもが来るなんて想像もできませんでした。当初は会場に来ること自体がカミングアウトになってしまう懸念もあった。今では、当事者や支援者だけでなく、友人や家族、子どもも来て楽しめるイベントになったと思います。今年は190以上の企業・団体が協賛してくれましたし、パレードの規模も過去最高。「祭りやってるらしいよ、ビールでも飲みに行こうか」という感覚で来てもらえるようになったのは、大きな変化です。

 いい変化だと受け止めています。中にはLGBTに関心もない人もいるかもしれませんが、「ハッピー、楽しい、おいしい」でみんなが集まれればいいんじゃないでしょうか。権利を主張すればするほど、当事者と非当事者が分断されてしまう。そうではなく、LGBTの人とそうでない人の接点を作り出すのが大事だと思うんです。

 年1回のイベントや普段の生活の場で、こういう接点を増やしていく。どこか遠い世界の話だと思っていた人にも、いろんな人がいるんだなと肌で感じてもらえればと思います。

マーケットが人権を作る

 --企業や行政もLGBTをマーケットとして意識したり、ダイバーシティー施策として制度に組み込むようになってきました。

 大きな転機になったのは、やはり東京都渋谷区の同性パートナーシップ条例(15年)ですね。行政が取り組んだことで多くのメディアに取り上げられ、「いない」ことが前提だったものが、「いる」ことが前提の会話が成り立つようになった。「寝た子を起こすな」じゃありませんが、透明人間のように扱われていたものが可視化されたというインパクトは大きかった。

 企業が経営戦略をの点からLGBTについて発信することも、僕は前向きに受け止めています。ビジネスにならなければ、カルチャーにもならない。例えば、以前は左利きの人は「ぎっちょ」と言われて右手を使うことを練習させられたこともありましたが、今は左利き専用のハサミやゴルフクラブが売られています。マーケットになって、はじめて人権が得られるという側面はあると思う。

 --当事者にとっては、まだまだカミングアウトしにくい状況があります。

 それでも、昔と比べれば、だいぶカミングアウトしやすくなりました。僕は僕自身をトランスジェンダーの代表だとは思っていませんが、ただ自分が名前と顔を出して声を上げることで、他の人も声を上げやすくなればいいなと思っています。

 セクシャルマイノリティーは非常に目に見えづらいので、声を出さないと「いない人」になってしまいます。「言わないのではなく、言えない」のだという現実を、誰かが声にしなくては伝わらない。

 僕は名前と顔を出して発言しても、変わらずに接してくれる家族や友人、職場での居場所があります。カミングアウトすることで家族や友人に嫌われるんじゃないか、職場で居場所がなくなるんじゃないか、という恐怖感はまだまだありますよね。だからこそ、言える人から言った方がいいのではないか。そうすれば、次の人も言いやすくなるはずです。

理想はLGBTという言葉なくすこと

 --杉山さんが描く理想の未来とは?

 LGBTという切り口から声を上げることで、すべての人にとって生きやすい社会を作りたい。「すべて」という言葉にこだわっています。

 理想は、LGBTなんて言葉が必要ない社会。わざわざカミングアウトなんてする必要もない。いつか、このイベントも必要なくなればいいですよね。単なる楽しいお祭りとして残って、「最初はこんな意味があって始まったんだって」となるのが理想ですね。

 今は転換期、過渡期だと思うんです。いろんな意見や摩擦もある。それを超えて、はじめて「普通」に、生活の一部になっていくんだと思う。

 そのためには、一過性のブームのように終わってしまっては意味がない。勢いがある今のうちに、制度に組み込んだり法律を整備したりして、すべての人が当たり前に、平等に扱われるようにしたいですね。どんな社会課題でも、最初はあまりに大きな壁のように立ちはだかっていて、変えられるわけがないと思いがちですが、ちゃんと声を上げて行動に移せば、未来は変えられるんだと信じています。

すぎやま・ふみの

東京都新宿区生まれ。日本女子大付属高校卒業、早稲田大大学院修了。元フェンシング女子日本代表。06年に自身の半生を描いた「ダブルハッピネス」(講談社)を出版。09年に乳房切除の手術を受けた。渋谷区の同性パートナーシップ条例の策定に関わった。

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