戦後72年、女性は自由になった。とはいえ「男女共同参画」が叫ばれるほど、いまだ女性の社会参加には困難な道がある。メフィスト賞受賞のデビュー作、宮西真冬さんの『誰かが見ている』(講談社)は、そんな社会の一端を描く。
登場するのは、不妊治療の末授かった我が子が可愛くない千夏子、子どもがほしいのにセックスレスの結子ら5人の女性たち。誰もが仕事と結婚、妊娠について問題を抱える。仕事を続けながら出産、子育てすることに職場とも夫とも折り合いがつかない。友だちづきあいもぎくしゃくし、ネットの悪意にもさらされ、追いつめられて、やがて千夏子の子どもがいなくなる--。同賞では珍しいテーマを扱った作品だ。
登場人物たちはいずれも自信がなく、傷ついている。はたから見ればさっそうとして、幸せそうであるにもかかわらず。こうした見えない不安をすくいとった。物語は、読んでいるこちらもうまく肩の力が抜ける地点に落着する。
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